ちょうど一年前、僕はまだ就活をしていた。中々内定先が決まらないことに焦りを感じながらも、いまだに社員ライターを目指していた。
そんななか、ある編プロ兼広告会社でライター募集がかかっていたので、僕はそこに応募した。リクナビでぽちっとやっただけ。これが悲劇の始まりだった……
電車とバスを乗り継いで2時間半、ようやく目的の会社に到着した。受付を通り面接会場に足を踏み入れる。
集団面接なのに僕しかいない。面接の時間になっても僕しかいない。
僕以外、みんなばっくれていた。そんなんだから内定でないんだよ。今回の募集は貰ったか? と心の中で勝利宣言をした。いやいやまて、焦ってはならない。ここでドジったら元も子もないと精神を引き締める。
面接官の男性が登場。いかにもエリートといった風貌、スーツの着こなしもかっこよくイケメン。そして自身に溢れたオーラを放っている。この時点で自信が揺らぐ。今からこの人とタイマンで話さないといけないのか……と不安でいっぱいになる。
「あー、君以外みんな来なかったねー」と面接官もあきれ顔。そりゃそうだ。この時期のばっくれるなんて、並大抵の根性があるか、相当就活を舐めているかしないとできない。
「しかたがないから個人面談にしようね」ということで面接がスタートする。
そして面接開始直後の第一声。
「えーと。本名呼び+ネットだとくらは君だよねー」
僕の面接は開始数秒で終了を迎えた。そう確信した。僕のTwitterといえば当時は就活ストレスで荒れに荒れていたからだ。頭の中が真っ白になった。
「そうです。くらはです……」力なく答える。
「うち、まずFBで面接相手のこと調べて、ついでにFBのリンクまでみるんだよねー。読書メーターがFBとTwitter両方にリンクしてあってさー」
一生における最大の失敗である。嗚呼。なぜ読書メーターとFBを紐づけてしまったんだ……なぜ! なぜ!
「ギター弾いてるんだねー。バイクも乗るんだー。ポケモン好きなんだー。カフカ好きなんだねー。俺も好きだよー」
とTwitter上に書いたあらゆる趣味の話が吹っかけられる。死にたい。すごく死にたい。でも趣味の話だから盛り上がる。
趣味の話が終わる。
「でもさー。Twitter見る限り、就職には向いていないと思うんだよ」と面接官。ここで死刑宣告である。僕の今回の面接は終了しました。
「ライターになりたいんだよね」
「はい」
「月いくら欲しい?」
「生活できるくらいなら低くてもいいです」
「安定は」
「生活ができるくらいなら……」
「じゃあ、フリーライターを目指した方がいいよ。Twitterを見る限り君は就職に向いていない」
Twitterで俺の全てが分かるのか! と叫びたくなったが我慢する。面接官の話は続く。
なんでも御社は就活コンサルティング業もやっているらしく、面接官様はその担当部署に普段はいるらしい。所謂「就活のプロ」だ。
そのプロ曰く、堀江くらはという人間は安定よりも縛られないことを重視し、常に新しいことに挑戦していきたいと考えているが、やや気が弱いため吹っ切れないで就職活動をしている。とのことだ。
Twitterで俺のなにが……図星である。まったくもって否定のしようがない素晴らしい分析だ。なんか悔しい。泣きたくなるくらい、いや、じっさい帰りの電車では泣きながらTwitterに「面接でツイバレしました」とツイートしてRTを稼いでいた。そう、電車のトイレで泣きながら。
面接官は続ける。
吹っ切ってしまった方がいいよ。吹っ切れないなら、ライターなんてあきらめた方がいい。今の君じゃ、どこも受からないから。君の就活は、夢を捨ててからしか始まらない。
「じゃあ、頑張って。応援してるよ」
この面接以降、僕は就活を止めた。別にフリーライターになることをこのタイミングで決めたわけではない。ただ、心が完全に折られてしまった。そしてフリーランスになることを決めるまでの間、僕は何もできない状態に陥ってしまったのである。
その後、フリーライターになってからその企業と連絡をとっていない。お仕事があれば引き受けますが、こっちから営業をかけるのはとっても怖いのだ(結局気が弱いのは相変わらず)
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