November 14, 2014
気候変動の影響は海面上昇、猛威を振るうハリケーン、頻繁な雷雨に留まらない。落雷の回数も増えるようだ。
専門家の推計では、米国本土全域の落雷の頻度が今後100年で50%増加する可能性があるという。全米の山火事対策にとっては頭の痛いニュースだ。
カリフォルニア大学バークレー校の大気科学者で、今回の研究の筆頭著者デビッド・ロンプス(David Romps)氏は、「米国本土の山火事の約半数は落雷が原因で発生している」と話す。
ロンプス氏によると、気温が上がると大気中により多くの水蒸気が存在できる。この水蒸気が、落雷の発生に大きく関わる要素の一つなのだという。
「落雷の増加は、大気中の温室効果ガスにも影響を及ぼすだろう」とロンプス氏・・・
専門家の推計では、米国本土全域の落雷の頻度が今後100年で50%増加する可能性があるという。全米の山火事対策にとっては頭の痛いニュースだ。
カリフォルニア大学バークレー校の大気科学者で、今回の研究の筆頭著者デビッド・ロンプス(David Romps)氏は、「米国本土の山火事の約半数は落雷が原因で発生している」と話す。
ロンプス氏によると、気温が上がると大気中により多くの水蒸気が存在できる。この水蒸気が、落雷の発生に大きく関わる要素の一つなのだという。
「落雷の増加は、大気中の温室効果ガスにも影響を及ぼすだろう」とロンプス氏。しかし、それにはメリットとデメリットがあるようだ。
デメリットとして、ロンプス氏は落雷の増加によりオゾンが増えることを挙げる。オゾンは強力な温室効果ガスの一つだ。
一方、メリットもある。落雷によって窒素酸化物と呼ばれる化合物が生成される。これが、やはり有力な温室効果ガスであるメタンの濃度を間接的に下げるのだという。
◆物理的要因を考慮
現在、雷の頻度は雷雲の厚さに基づいて予測が行われているとロンプス氏は説明する。これは、厚い雲ほど雷を多く発生させることが観測から分かっているためだ。専門家の計算式では、雷の増加は単純な1対1の相関ではなく、指数関数的である点が考慮されている。
ロンプス氏はこうした予測の問題点として、大気中の水蒸気の量や、雷雲が上昇気流を起こす可能性など、雷の発生に関わる多くの物理的要因を計算に入れていないことを挙げる。
予測に際してこうした要素を組み込んだのが今回の研究だと、ロンプス氏は語った。
◆降水、上昇気流と雷
アラバマ州ハンツビルにあるNASAのマーシャル宇宙飛行センターで雷を専門に研究するリチャード・ブレークスリー(Richard Blakeslee)氏は、「雷は、雲の中のプラスまたはマイナスに帯電した部分から、逆に帯電した部分へと電流が生じるときに発生する」と説明する。強い上昇気流(上に向かう空気の流れ)が起こると、雲の中の粒子が衝突して帯電する。
細かい氷の粒子は通常、プラスに帯電し、上昇気流に乗って雲の上部に移動しやすい。マイナスに帯電した粒子は、雲の底部近くにたまっていく。
そこでロンプス氏らの研究チームは、降水(氷の粒子を形成する)に基づく雷の発生頻度と、雷雨が上昇気流などの活動を起こす度合いをシミュレーションするコンピューターモデルを作成した。
2011年の米国本土における落雷データに対して、研究チームが新たな予測方法を試したところ、シミュレーションによってこの年の落雷のうち77%を予測できたことが分かった。
ロンプス氏らは、今回の研究成果は米国海洋大気庁(NOAA)と全米雷観測ネットワークのデータに基づいており、米国本土にのみ当てはまるものだと、早くから注意を促している。
ロンプス氏の次の取り組みは、予想される落雷の増加量を地図にまとめることだ。同氏は、「現在、米国での落雷の多くは、フロリダ州およびミシシッピ川・オハイオ川沿いの州で起こっている」と話しているが、これらの地域で今後さらに落雷が増えるかどうかは未知数だという。
今回の研究成果は、「Science」誌に11月14日付で掲載された。
Photograph by Carsten Peter / National Geographic Creative