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<群馬大病院>腹腔鏡手術8人死亡 同一医師、審査受けず

毎日新聞 11月14日(金)11時36分配信

 群馬大医学部付属病院(前橋市)は14日、40代の男性医師が2010年12月から今年6月に執刀した肝臓の腹腔(ふくくう)鏡手術で、術後4カ月以内に患者8人が死亡したことを明らかにした。いずれも保険が適用されない高難度手術で、事前に院内の倫理審査が必要だが、医師は審査を受けていなかった。同病院は外部の専門委員を含む院内調査委員会を設置して調査を進めており、今年度内に結果をまとめる方針。

 この医師は第2外科肝胆膵(かんたんすい)グループ長の助教。同病院によると、第2外科がこの期間中に腹腔鏡を使って肝切除手術を実施した92人のうち、県内外の60〜80代の8人(男性5人、女性3人)が術後2週間〜100日で敗血症や肝不全、多臓器不全などにより死亡した。8人を含む92人の大半をこの医師が執刀。現時点で手術と死亡の因果関係は不明だが、9月以降、同グループの全手術を取りやめている。

 同病院は、患者や家族に十分な事前説明がなかった可能性があることや、手術の前に必要な肝臓の大きさを調べる検査が実施されていなかった点などを問題視している。また、保険適用外の外科手術を行う場合、同病院は基本的に院内の倫理委員会に事前申請して審査を受ける必要があるが、8人について申請がなかった。この医師は「申請の有無に関する認識が甘かった」と説明しているという。

 群馬県庁で14日に記者会見した野島美久病院長は「病院として大変重く受け止めている。関係者や遺族の皆様に多大な心配、心痛をおかけし、心より深くおわびします」と謝罪した。

 塩崎恭久厚生労働相は14日、閣議後の記者会見で「病院側から聴取して事実関係を把握し、適切な対応を取る」と述べた。

 腹腔鏡手術を巡っては、千葉県がんセンター(千葉市)でも今年、術後に患者の死亡が相次いでいたことが分かり第三者委員会が調べている。【角田直哉、田ノ上達也、尾崎修二】

 【ことば】腹腔鏡手術

 腹部に開けた5〜12ミリの複数の小さな穴から細長い小型のカメラ(腹腔鏡)や手術用の器具を入れ、モニターを見ながら行う手術。開腹手術に比べ傷口が小さいため体に与える負担が少なく、回復が早くて入院期間が短いといったメリットがある一方、高い技術レベルが要求される。胆石や胆のうポリープ、大腸がんの手術では標準的な治療法となりつつあるが、肝臓は手術自体が難しく、他の臓器に比べ普及が遅れている。

最終更新:11月14日(金)18時17分

毎日新聞

 

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