朝日新聞:社長辞任発表 社外に応える姿なく

毎日新聞 2014年11月14日 21時21分(最終更新 11月14日 23時27分)

朝日新聞社の木村伊量社長=東京都中央区で2014年9月11日、梅村直承撮影
朝日新聞社の木村伊量社長=東京都中央区で2014年9月11日、梅村直承撮影

 報道機関のトップが引責辞任するという異例の事態にもかかわらず、自身は姿を見せなかった。東京電力福島第1原発事故の「吉田調書」報道や過去の従軍慰安婦報道の取り消しなどを巡り14日、辞任を発表した朝日新聞の木村伊量社長。記者会見を開き、社外からの疑問に応えることはなかった。トップの交代で朝日は変わるのか。

 午後3時、臨時取締役会で辞任が決まった木村社長は社員が集まる東京本社(東京都中央区)15階に現れた。関係者によると、あいさつで「社員のみなさんにも経営陣を代表して改めておわびいたします」と話したという。大阪本社の社会部出身で55歳の渡辺雅隆氏を新社長に抜てきした過程にも触れ、前日の常務会などで約10時間の討議の末の人事だと明かした。「ひときわ若い社長となる。みぞうの危機にある朝日新聞の立て直しと、構造改革の断行にリーダーシップを存分に発揮してくれると確信している」と述べたという。

 一方、社外のメディアなどにはA4判1枚の紙に「深くおわび申し上げます」などと書いた「コメント」を出した。同社広報部によると、今後も木村氏の記者会見の予定はないという。関係者によると、社内では「社長は刷新へのメッセージを(社外に)発するべきではないか」との声も出たが、「辞める人の記者会見は会社の危機管理の観点からもプラスにならないのでは」と疑問を呈する役員もいたという。

 社長の辞任を社員はどう受け止めているか。幹部の一人は「一つの区切りだが、これで終わりではない。社員が朝日の問題点を洗いざらい把握して再出発しなければ。吉田調書報道の本質は『おごり』。内部からも出た異論に向き合わず、自分たちが間違いを犯すわけがないと思い込んでいた。もう一つは、目線の高さ。事実にも謙虚に、また周囲の人たちにも謙虚になる必要がある」と話す。

 中堅記者は、従軍慰安婦報道を取り上げたジャーナリスト、池上彰さんのコラムの掲載を見合わせたことが最大の問題だったと感じている。「現場の問題だけでなく、上層部が判断をしくじったことが致命傷になった」と振り返る。【青島顕、北村和巳】

 ◇誤報を誤報と認めた点は正しく評価されるべきだ

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