需要は減退するので、企業は国内生産・投資、さらに雇用を減らし、経済は萎縮するという悪循環に陥る。このことは、経済学を勉強しなくても分かる常識なのに、御用学者のデマゴギーを野田氏はうのみにした。
安倍首相の場合は、いったん与党の自公が野田氏が敷いた増税路線に乗ったが、恐るべき災厄を招きつつあることに気付いた。消費税増税で全体の税収が増えるとはかぎらない点や、脱デフレのゴールが遠のく現実を憂慮するようになった。消費税増税後の需要反動減後について、「消費がV字型に回復する」という日経新聞やエコノミストたちの楽観論も現実のデータが吹き飛ばしたので、最近ではさすがに増税派も口ごもるようになった。
それでも、与党内には、予定通りの増税推進派が多数を占めているが、各種世論調査は圧倒的多数が否定的だ。首相の「増税延期で国民に信を問う」決断はタイムリーだ。
安倍路線に対し、民主党側は「増税ができないのは、アベノミクス失敗のせいだ」と打ち返すつもりだが、責任逃れだ。有権者を引きつけたいのなら、率直に「わが党推進の増税は間違っていた」とまずわびよ。そして、「再増税反対」へと大転換すべきなのだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)