21世紀の世界を占ううえで、米国と中国は決定的な影響力をもつ。だが、その関係はいまも明確な輪郭を描けていない。

 友人か、ライバルか、敵か。多面的な関係が続くなかで、今週の北京での首脳会談も、明暗入り交じる結果となった。

 歴代皇帝の庭園で、いまは共産党政権の中枢である中南海にオバマ大統領を招き入れた習近平(シーチンピン)国家主席。会談は、2日間で約9時間に及んだ。

 破格の国賓待遇をみせた習氏としては、いまや米大統領と肩を並べる特別な地位を誇示する狙いがあったのだろう。

 成果として、地球温暖化対策での新たな目標を掲げることができたのは朗報だった。

 両国は温室効果ガスの最大排出国ながら、対策に消極的だった。遅ればせながら世界の取り組みに貢献するのは、大国として当然の責務である。

 ただ会談全体をみれば、温暖化対策でしか、協調を演出できなかったというほかない。

 共同会見は対立が際だった。香港の選挙をめぐる街頭活動についてオバマ氏が「透明な選挙」を促すと、習氏は内政干渉をはねつける姿勢をみせた。

 軍事面では、偶発的衝突を避ける連絡の仕組みづくりで合意したが、積年の軍事交流の努力は深まりを見せていない。むしろ西太平洋での軍展開をめぐる緊張感は高まっている。

 領土問題が入り組む南シナ海の島々で、中国は支配の強化を進める。米国は周辺国との同盟強化を広めており、オバマ氏は「航行の自由」を強調した。

 米中の根本的な問題は、既存の大国と勃興する大国とが衝突を避け、共存共栄できるかだ。覇権争いはしばしば激烈な戦争を生み、世界を混乱させたことを世界史は教えている。

 習氏は今回も焦点の発言を繰り返した。「太平洋には米中両大国を受け入れる十分な空間がある」。そう説く「新型の大国関係」である。

 その真意が「アジアのことは我々が決める」という意識なら、折り合いはつくまい。

 米欧が主導する国際金融体制をめぐっても、中国は対抗するかのようなアジアインフラ投資銀行の設立を決めた。

 アジア諸国の側から見れば、望むのは平和的な発展の支援であり、米国か、中国か、の選択はありえないだろう。

 国際社会が戦後築いてきた協調秩序の中に、中国をどう穏当に導くか。その知恵が試される最前線には、米国だけでなく、日本もいる。その自覚を忘れてはなるまい。