〔新着10月28日UP!〕
日韓関係改善を阻むもの
深層NEWSの核心
近藤和行/玉井忠幸
〜「中央公論」2014年11月号掲載
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◆反日世論というくびき
「李明博前大統領を引き継いだ朴槿恵大統領は、(日本に対して)より強硬な姿勢を取り続けざるを得ないのだろう。国内の事情が大きいと思うが、引くに引けないのではないか」=三ツ矢憲生外務副大臣(昨年十二月二十五日)
「(朴大統領は)国家戦略として、日本バッシングをしている」=武貞秀士・拓殖大客員教授(二月十七日)
玉井 韓国の朴槿恵大統領は昨年二月の就任以来、日本への厳しい姿勢を崩さず、日韓首脳会談も実現していません。そこで最大のポイントになっているのは「慰安婦」の問題です。
李明博政権下の二〇一一年八月、韓国の憲法裁判所は、元慰安婦の賠償請求権について韓国政府が解決への努力をしていないのは人権侵害であるという判断を下しました。これによって、韓国政府としては日本に圧力をかけざるを得なくなった。もちろん、実際には一九六五年の日韓請求権協定で賠償問題は解決済みです。つまり法的には完全に決着がついているのに、韓国では国民感情が政策を動かしてしまう。
近藤 韓国では「反日」を打ち出さないと政治的に支持を得にくい、というところがありますからね。一方で、これまでウォン安を生かした輸出で経済成長をしてきた韓国産業も、最近ではウォン高が進んだことで国際競争力を失いつつある。一時は日の出の勢いだったサムスングループでさえ例外ではない。経済的に厳しい状況になって不満を抱いた国民が、そのはけ口として日本バッシングをしている、というところもあるのではないでしょうか。
玉井 韓国の対日姿勢硬化の背景には、中韓の接近もありそうです。とりわけ両国は経済関係の緊密化が進んでおり、外国からの観光客も今では日本人より中国人のほうが目立つそうです。
近藤 韓国の製造業には、部品を中国に輸出し、現地の工場で組み立ててから製品として輸出しているところが多い。ところが中国も、最近では自前の輸出産業育成に取り組んできたから、利害対立が生じつつある。そういう事情もあるので、中国とは良好な関係を築こうとしているということもあるのでしょう。
「態度を硬化させているのは韓国側だ。韓国側が譲歩しないと、日韓関係はうまくいかない」=森本敏・前防衛相(三月六日)
玉井 ここで森本氏が指摘しているように、日韓関係については日本側から動いて解決できる部分はほとんどありません。竹島問題を考えても、不法占拠を続ける韓国に対して、日本は実力を背景として現状変更をしようとしているわけではない。靖国問題でも、韓国側の批判が正当とも思えませんが、ともかく安倍首相はこの夏の靖国神社参拝を自制しています。