2014年11月06日 18時34分

冨田尚弥選手「陳述書」全文――私にかけられた「えん罪」を晴らしたい(上)

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冨田尚弥選手「陳述書」全文――私にかけられた「えん罪」を晴らしたい(上)

韓国・仁川で開かれたアジア大会の競泳会場でカメラを盗んだとして、韓国で略式起訴処分を受けた競泳の冨田尚弥選手が11月6日、名古屋市内で記者会見を開き、自らの「えん罪」を訴えた。

冨田選手は、競泳会場で韓国メディアのカメラマンが席を離れた際に、一眼レフのカメラを持ち去ったとして、窃盗容疑で略式起訴され、罰金100万ウォン(約10万円)を納めていた。

記者会見では、冨田選手が事実の経緯について詳細に説明した「陳述書」が、報道陣に配られた。陳述書の全文は以下の通り。

●冨田選手の陳述書(全文・上)

1 私は、平成26年9月18日から同年10月4日までの間、韓国で開催された「第17回アジア競技大会(アジア大会)」では、100メートル平泳ぎ及び50メートル平泳ぎ競泳の日本代表に選出され、日本選手団の一員として大会に参加していました。

私は、大会第8日目の同年9月25日に、韓国の記者朴ジホ氏(以下、「朴記者」といいます。)所有のデジタル一眼レフカメラ「キヤノン EOS-1DX」(以下、「カメラ」といいます。)を盗んだ窃盗の容疑で、同月26日から翌27日にかけて、韓国の警察による取調べを受け、その容疑を認めました。

同年9月27日の段階で、私は、日本オリンピック協会(以下、「JOC」といいます。)による日本選手団からの追放処分を受けました。

そして、同月29日、韓国の検察庁から罰金100万ウォンの略式起訴処分を受けました。言い渡された罰金100万ウォンは、日本水泳連盟(以下、「水連」といいます。)がその日のうちに韓国の警察署宛てに振込入金の方法で立替払いをしました。そして、私は、帰国後の同年10月8日、水連から立替金の請求を受けたので、同月22日に水連に立替金分を支払いました。なお、私は、罰金が立替払いされたことを事後的にしか聞いておらず、立替払い前に、水連から立て替え払いすることの事前確認等はありませんでした。

帰国後、私は、同月8日付けで、水連から、平成28年3月末日まで選手登録停止処分とするという内容の処分案の通知を受けました。私には、上記処分案に対して、通知を受けた後2週間以内に不服審査委員会に対して不服を申し立てる権利が与えられました。しかし、私は、今回、日本以外にもアジア各国が参加する国際大会という名誉ある舞台において、世間にお騒がせをし、水連をはじめ、JOCや私を雇用して下さっていたデサント、その他関係者の方々に多大なるご迷惑をお掛けしたことを申し訳なく思いますので、水連が決定した処分案に対する不服申立てはしませんでした。上記処分案は、私が不服申し立てをしなかったことで、同月30日に開かれた水連の理事会により正式に決定され、処分案のとおり、私は、平成28年3月末日まで選手登録停止の状態となりました。

2 しかし、私は、今回の窃盗事件に関して、ご迷惑をお掛けした関係者の方はもちろん、世間の皆様に対して、どうしてもご理解いただきたいことがあり、この度、記者会見という場で、私が体験した真実を全て話すことを決意致しました。

私は、記者の方のカメラを盗んではいません。私は、当時、自分がカメラを盗んだ犯人だという身に覚えのない疑いをかけられた上、韓国の警察官から取調べを受け、また、警察署に連行されるという人生で初めての場面に直面したことにより、冷静でいられなくなり、パニック状態に陥ってしまいました。そして、警察官から、通訳を通じて、「事を大きくするつもりはない。認めれば、次の日の飛行機にみんなと一緒に乗れるよ。」、「素直に応じれば、刑が軽くなって、大ごとにはならないから。」、「応じなければ、日本に帰れず、韓国に残らなければならない。」等と言われました。私は、パニック状態に陥っていたことや今回の件を認めないと、韓国に身柄を拘束され、身動きが取れなくなってしまうことへの不安が募ったこと等から、自分の身の潔白を主張し続けて争うことよりも、警察官の言うとおり大人しく従い、言いなりになって事を荒立てなければ、無事・日本に帰ることができるし、また、水連、JOC、デサント等、全ての関係者の方にも迷惑がかからないと考えるに至りました。

今、冷静になって考えると、それは誤った判断でしたが、私は、警察官に言われるまま、カメラが欲しくて思わず盗んだという事実関係を認めてしまいました。

3 今回、私は、窃盗の罪に問われるようなことを、何一つしておりません。そこで、今回の件に対する私の弁明を、時間の流れに沿って説明致します。なお、韓国での取調べ後、出国までの間は、私も取調べを受けるという初めての経験からパニック状態になっていた部分もあり、多少、事実関係に勘違いがあるかも知れませんができるだけ思い出しながらお話しします。

4 窃盗行為をしたと疑われた平成26年9月25日、私は、午前9時頃から午前10時頃まで、他の選手が出場したレースを応援し、その後は、午前11時頃から、アジア大会のレース競技用のメインプールとシンクロ競技用や飛び込み競技用のダイビングプールが備えられたメイン会場で、十数名の日本代表選手と共に、練習をする予定でした。

競泳選手は、練習後、すぐに水着からジャージに着替えて移動するため、タオルや競泳用具等を入れたバッグを各自で準備し、メインプールがあるメイン会場の裏側にある練習場内に設けられている日本選手団控場所に、そのバッグを置いていました。私は、2年ほど前から、はっ水加工が外面に施されているビニールのような素材で、側部に取手が付いており、上部がファスナーで開閉する構造の紫色の手提げバッグを使用しています。私は、この日も、そのバッグに水着1着、水泳キャップ7枚、水泳ゴーグル3個、セームタオル1枚を入れて練習場に持参し、他の選手の応援の後、控場所に移動し、ジャージから水着に着替え、控場所にバッグを置いて、メイン会場に移動しました。

練習開始前の午前10時30分頃、私は、練習を終えた松田選手と、メインプールのプールサイドで30分ほど話をしていました。このときの松田選手との会話で特に印象に残っているのは、先ほど行われた女子400メートルリレーの予選で、中国のバタフライを泳いだ選手の潜水キックが、制限の15メートルを超えていたと判定されたことで中国が予選失格となり、これに対して中国側が激しく抗議していたという話題です。私は、松田選手と、「抗議が長いね。」などと話していました。そして、松田選手から「お前練習をしていないなら、早く練習しろよ。」等とも言われたので、私は午前11時頃から練習を開始しました。松田選手は、そのまま選手村に帰ったようでした。なお、プール内の練習では女子の個人メドレーの寺村選手とも一緒でした。

韓国の警察の発表では、私の犯行時間は午前10時48分頃となっているとのことですが、私は、その時間帯は松田選手と雑談していたので、私が盗みをすることなどあり得ないことです。

5 私は、翌日に50メートル平泳ぎ予選に出場予定でしたので、この日の練習は軽めに済まそうと思い、寺村選手より先にプールを出てメイン会場から控場所に行き、そこで水着からジャージに着替え、一人で、再び練習場からメイン会場へと移動しました。

メイン会場内のメインプールでは、寺村選手らがまだ泳いでおり、私は、彼女らと一緒に選手村に帰ろうと思っていたので、彼女らの練習が終わるまで、メインプールの様子を見ながら待つことにしました。このときの時間は午後0時頃です。当時、メインプールのプールサイドには、高さ約70センチメートル、縦幅と横幅がそれぞれ数メートル程度の、細長い長方形の台座が設置されていました。この台座は、メインプールで試合があるときに、記者の方が写真撮影のために利用していたものだと思いますが、どういう使い方がされていたか、詳しくは覚えていません。

私は、立ったままでメインプールの様子を見ているのも疲れると思い、その台座にメインプールの方を向いて腰かけ、上半身を少し後ろに傾け、両手を斜め後ろ方向の下側に伸ばして、その上半身を支えるような体勢を取りました。台座の高さが約70センチメートルだったので、そのときの私の足先は、地面につくかつかないかという状態でした。このとき、私のバッグは、ファスナーを閉じた状態で、バッグ本体が自分の左斜め後ろの位置にあり、私は、上半身を支える両手のうち、左手で、バッグについている取手を軽く握っていました。

6 その体勢で、台座に座りながらメインプールの方を見ていると、まもなくして、突然、何者かに私の左手首をきつく掴まれる感覚がありました。このときの時間は、午後0時頃だったと思います。

私は、突然の感覚に、一体何事かと思い、上半身を左に半身捻るようにして、顔を左向きにして後ろを振り返りました。すると、全く面識のない男性(以下、この男性を「A」といいます。)が、そのとき私が腰かけていた台座の向こう側から、身を乗り出すようにして、私の左斜め後ろ方向におり、私の左手首を掴んでいる姿が目に入りました。このとき、あまりの唐突さに驚いてしまい、私の左手首を掴んできたAの手が、左右どちらの手だったのか、正確には思い出せません。ただ、当時の状況を思い出すと、Aが、片足の膝を台座に乗せ、右半身を乗り出して私の近くにいた体勢だったという記憶があるので、その体勢で左手首を掴むのであれば、右手の方が自然だろうということから、弁護士と協力して作成した写真撮影報告書では、Aに、右手で私の左手首を掴まれたという前提で写真を撮影しました。

なお、私が振り返ったときに、一瞬だけ、Aと目が合いましたが、Aの特徴は、肌はアジア系で少し日焼けをしたような感じの色であり、髪は黒い短髪で、瞳は黒く、にやつくような不敵な笑みを浮かべた表情をしていました。Aと目が合った後、私は、すぐに少し下を向いて掴まれている私の左手首の方に注目し、その体勢でAとやり取りをしていたことから、Aが上半身にどのような衣服を身に着ていたか、全く記憶にありませんが、私がAの特徴として一番印象に残っているのは、Aは、濃い緑色の長ズボンを履いていたということです。

また、Aは、このとき、私に何やら話しかけてきましたが、少なくとも、日本語や英語ではなく、私にとっては理解できない言語だったので(因みに、私は、韓国語も中国語も分りません。)何を言いたかったのか、私にはその内容が分かりませんでした。

7 その後、Aは、私の左手首を掴んだまま、私が左手で取手を軽く握っていたバッグに手を伸ばしてきて、バッグのファスナーを開けようとしてきました。私は、Aが自分のバッグを開けようとする不審な行動に出てきたため、とっさに、バッグを自分の方に引き寄せてAから引き離そうとしました。しかし、Aの力は思いの外強く、Aからバッグを引き離すことが出来なかったので、まずは、掴まれている左手首から、Aの手を振り払いました。そうしている隙に、Aは、既にバッグのファスナーを開けていました。そして、Aは、大きくて黒い塊を、素早く私のバッグの中に入れました。私は、とても混乱していたので、このときにAが私のバッグに入れてきた黒い塊が、一体何であるのか、咄嗟には理解できませんでした。

以上のように、私は、これまでに体験したことのない突発的な出来事に遭遇し、すっかり気が動転していました。そして、この正体不明のAに、黒い塊を入れられたバッグごと、練習用の水着、試合用のキャップやゴーグル等を奪われてしまうのではないか、それだけではなく、Aから何か危害を加えられるのではないかという言いようのない不安に襲われ、その場から一刻も早く立ち去りたいと思いました。そこで、Aが何を入れたか確認するよりも、この場を離れるのが先決だと思い、私は、両手で自分のバッグを掴み、右手でファスナーを閉め、自分の荷物がこぼれ落ちない状態にした上で、バッグを引っ張り、Aからバッグを引き離しました。そうして、何とかバッグを取り戻した私は、すぐに台座から立ち上がってその場を去ろうと、メイン会場のダイビングプール近くにある選手村へのバス乗り場がある出入り口の方へ向かって歩いていきました。

先にも述べたとおり、私のバッグには水着1枚、キャップ7枚、ゴーグル3個、セームタオル1枚しか入っていないので、比較的軽かったのですが、Aから取り戻したバッグを左手に持ったときに、バッグにズシリとした重みを感じました。

私は、Aが入れてきた黒い塊が一体何なのか、よく分からなかったのですが、もしかしたら、何か大きなゴミでも入れたのかなと思いました。それで、私は、Aが、メイン会場の台座付近にはゴミ箱が見当たらないことからゴミ処理に困り、そのゴミを捨ててくれというようなことを私に言っていたのではないかと思ったのでした。そう思うと、私は、せっかく、午前中の練習を終えて、翌日のレースへの集中力を高めていたのに、突然、見知らぬ男性からゴミの様な物を押しつけられたということで、気分が削がれ、テンションが下がりました。

なお、私がAからバッグを取り戻して出入り口に向かった後は、Aがどのような行動を取ったのか等については、早くその場を離れたいという気持ちもあり、振り返ってAの様子を見るということをしていないので私には分かりません。

従って、現時点でAの正体については不明なままです。

8 突然の出来事でテンションが下がってしまったので、私は、一人で選手村に帰ろうとしていたのですが、出入り口付近で練習を終えた小関選手が、「一緒に帰りましょう。」と私に声を掛けてきてくれたので、午後12時30分頃、小関選手と一緒に、メイン会場に到着した選手村行きのバスに乗りました。

なお、私は、Aから入れられた黒い塊をゴミだと思っていましたし、少なくとも、私がAとやり取りした台座付近から私が移動してきた選手村行きのバス乗り場までの道中にはゴミ箱が見当たらなかったので、メイン会場では黒い塊を処理できず、結局、選手村に戻って何とかするしかないだろうと考えていたので、Aから離れた後、すぐにはバッグを開けず、中身を確認しませんでした。

また、Aとの出来事を、特に小関選手には話していませんが、それは、まだ、私自身、事態を把握しきれていなかったからです。

9 選手村行きのバスは、中央の通路を挟んで左右に2人がけの座席が十数列ほど並んでおり、私は、通路を挟んで進行方向に対して右側の座席の半分より少し後ろの位置の窓際の席に座り、小関選手は、私と同列の通路を挟んだ左側の窓側の席に座りました。そして、私の隣の通路側の席は空席だったので、私は、黒い塊のせいで重くなったバッグを抱えていて疲れたので、その空席にバッグを置きました。

私のバッグは、よく目を凝らして見ると、中身が若干透けるような薄い素材で出来ているので、一体どんなゴミを入れられたのだろうと思い、一応、バッグの外から、黒い塊が透けて見える部分をよく見たところ、黒い塊の表面に、銀色の丸い形が透けているのが確認出来ました。

今となれば、その銀色の丸い形が、デジタルカメラの本体とレンズの接合部分だったと理解できますが、当時の私には、銀色の丸というだけでは、それがどんなゴミなのか、見当もつきませんでした。

また、バスの中にはゴミ箱がありませんので、バッグを開けたところで、どうせ黒い塊を捨てることは出来ないと分かっていたので、敢えて、ファスナーを開けて中身を確認することまではしませんでした。

そして、小関選手や寺村選手、神村選手とは席が離れていたので、結局、私は、バスに乗車中、誰とも話をすることはありませんでした。なお、私は、この日の練習を終えてからメイン会場の台座のところへ移動し、Aと争い、Aからバッグを取り戻してからバスに乗るまでのルートを書いたアジア大会メイン会場の見取り図を作成しましたので、この陳述書に添付致します。

10 午後0時45分頃、バスが選手村へ到着したので、私は、降りた後、いつものように、寺村選手と神村選手と一緒に、選手村内の食堂へ行き、食事をとりました。選手村の食堂では、食事中、手荷物を一旦預けなければならないので、食堂の入り口で3人分の荷物を一緒に預け、席につきました。このとき、私は、翌日に50メートル平泳ぎ予選を控え、嫌なことは早く忘れて、予選に向けて気持ちが高まるような話がしたいと思っていたので、食事中の会話で、Aのことや黒い塊のことを話す事はなく、敢えて、翌日の試合の話など、テンションが上がる話をしながら、食事をしていました。

11 食事を終えた後、選手村内にある日本代表用ビルの2階にある休憩施設に行きました。そこでは、インターネットを使用したり、スープを飲んで休憩したりすることが出来るので、そこで、30分ほどの間、私は携帯電話を使用する等して過ごしました。

このとき、私は、せっかくの休憩時間に、黒い塊のことで気分を害したくなかったこと、この休憩施設にも外からの持ち込みのゴミを捨てるようなゴミ箱がなかったことから、ここでもバッグの中身を確認することなく、自分が座っている場所から少し離れたテレビの横に置いておきました。

12 休憩終了後、私は、置いておいた自分のバックを手に取り、仲間と一緒にエレベーターに乗り、自分の部屋に戻りました。部屋に戻ってから、私は、翌日の試合に向けて水着等を乾かすためにバックを開けたところ、そこで初めて、Aが入れた黒い塊がカメラであることを確認しました。なお、後日、カメラの形状や重さを詳しく調べてみたところ、縦約16センチ、横約16.5センチ、幅約8センチで、重さは約1.3キロありました。

私は、普段、記者の方が撮影に使っている大きなカメラを見たことがありますが、その大きなカメラには、望遠鏡のような長いレンズが付いているはずなのに、このカメラには長い部分が無かったことから、折れる等して壊れてしまったのではないかと思い、結局、Aが壊れたカメラを捨てられなくて、困って、私にゴミ処理を押し付けてきたのだと思ってしまいました。私は、デジタル機器等についてほとんど知識がなく、特別の興味もなかったので、いわゆる一眼レフカメラのレンズが取り外し可能なものであり、カメラ本体だけにできるということは、今回の事件を通じて、初めて知りました。そして私は、Aがバックに入れてきたカメラは、壊れたカメラだと思ってしまったのです。

なお、選手が泊まる各部屋には、備え付けのゴミ箱はなく、選手が競技を終えて帰国するときに部屋を退出する際、不要なゴミを一か所にまとめておけば、管理者の方がそれをゴミとして処理してくれることになっています。

従って、私は、選手村を出るときに、このカメラをゴミとして置いていこうと考えていましたが、部屋が狭く、また、私の一人部屋ではなく、原田選手と相部屋だったため、スペースを勝手に使う訳にもいかないと考え、結局、奥の方にある私のベッドの足元に、開いた状態で寝かせて置いてある自分のスーツケースの、荷物の出し入れをあまりしない方のスペースに、何かで包むなどせず、そのままの状態でカメラを置いておきました。

もし、私が、他人のカメラが欲しくて、これをメイン会場から盗んできたのだとすれば、相部屋で生活する原田選手にそのことが見つかれば、直ぐに誰かに報告されてしまうので、誰にも見つからないように、例えば、スーツケースの荷物と荷物の間に挟んだり、カメラ自体を何かで包んだりすることで、見えないようにして隠していたと思います。

なお、私が大会期間中、この件が起きるまで原田選手と共に過ごしていた部屋の見取り図を、私がカメラを置いてあった位置も含めて作成しましたので、この陳述書に添付致します。

13 午後7時頃、私は、2階の休憩施設に行き、そこに設置されているモニターで、何人かで一緒に仲間の出場したレースを見ていました。私は、午後9時過ぎ頃までレースを見ていましたが、翌日の試合に備えて早めに寝ようと思い、再び自分の部屋に戻り、午後10時頃に就寝しました。

このとき、原田選手は部屋に戻ってきていなかったので、結局、私は、この日、原田選手と部屋で会うことはありませんでした。また私は、2階の休憩施設でレースを見ているときはモニターに集中し、従って、カメラの話を話題にして誰かと話す機会がありませんでした。

14 翌9月26日、私は、午前7時に起床し、当日の試合の準備を始めました。原田選手は、この日、特にレースの予定が無く、まだ寝ていたので、敢えて声をかけずに、私は部屋を出ました。

私は、午前8時くらいにバスに乗ってメイン会場へと向かい、午前9時頃から始まった50メートル平泳ぎ予選に出場しました。午前9時20分くらいに予選レースが全て終了しましたが、私は、今ひとつ調子が上がらず、健闘むなしく、予選敗退となってしまいました。午前9時50分頃、試合後のクールダウンを済ませ、先日の練習のときも着替えをした日本代表用の控場所で、ストレッチ等をしたり、セントラルスポーツ株式会社所属の岡田コーチと話をしたりしていました。

15 そして、午後0時頃、日本代表チームで選手村へ帰りました。このとき、バスの中には私を含めて日本人選手が沢山いたので、その中の誰と一緒に帰ったのか、誰がどの席に座っていたのか、正直、覚えていません。選手村に着いた後、私は、予選の結果に対するショックもあり、自分の部屋に戻って、寝転んでいました。

16 午後6時45分頃、私は、再びバスに乗ってメイン会場へ行き、仲間の出場レースを見ながら、応援をしていました。

この日に行われた決勝レースが間もなく終わろうとしたとき、JOCの柳谷さんという方が、私を呼びに来ました。私は、初めてお会いした柳谷さんから、特に説明も受けることなく、ただ、「付いてきて欲しい。」と言われたので、用件は分かりませんでしたがとりあえず付いていくと、メイン会場外の選手村行きのバス乗り場に誘導されました。そこには、銀色のワンボックスカーが一台停まっており、その車の付近には、私服の韓国人男性3、4名と、アジア大会のボランティア参加者用のジャージを着た韓国人男性1名が立っていました。どうしてこんなところに連れてこられたのか、私の目の前にいる人達は一体何者なのか等、私の中で色々な疑問が頭を飛び交い、訳が分かりませんでした。

私は、柳谷さんからワンボックスカーに乗るよう指示を受けたので、3列シート構造の車の2列目の運転席側(左ハンドルだったので、左側)から、おそらく、柳谷さん、私、ジャージの男性という順で乗り込みました(私と柳谷さんの位置が逆だったかもしれません。)。そして、私服の男性らは、左ハンドルのワンボックスカーの運転席と隣の助手席に一人ずつ、そして、3列目に残りの人がそれぞれ乗り込みました。私は、一体、何のためにワンボックスカーに乗り込んだのか、これからどこに行くのか、本当に何も分からないままでしたが、ただ、黙って指示に従うしかありませんでした。

車に乗り込むと、2列目に座ったジャージの男性が、たどたどしい日本語で、私に対して、「カメラを持っていますか。」と聞いてきました。私は、「カメラを持っているか。」というジャージの男性の言葉を聞いて、カメラと言われれば、先日、Aからバックに入れられた壊れたカメラのことしか思い当たるところはなく、そのカメラはその時点で自分の部屋のスーツケースに置いてあったので、「持っている。」という意味で、「はい。」と答えました。すると、ジャージの男性は、私に対して、「今回は、事を大きくするつもりはない、素直に認めれば、他のみんなと同じ飛行機に乗れるから。」ということを言ってきました。私は、何を認めればいいのか、他のみんなと同じ飛行機に乗れない事情でもあるのか、疑問に思いました。

その後、ジャージの男性が、私か柳谷さんに対して、「今からカメラを取りに行くので、選手村へ行きます。」と言うと、ワンボックスカーで、そのまま選手村へと移動しました。私は、この時点ではまだ、何故、これだけ大人数で、わざわざ壊れたカメラを選手村に取りに行くのか理由が分からず、事態を全く把握出来ませんでした。

※陳述書(下)はこちら。

(弁護士ドットコムニュース)

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