NHKが10月末に公表した「インターネット実施基準要綱」が民放各社の間で波紋を広げている。要綱は放送番組などをネット配信する際のルール案に相当するものだが、文面が様々に解釈できるうえ、そもそも巨大メディアのNHKがどうネットを活用していくかの具体策が見えないためだ。「放送と通信の融合」が進む中、NHKの動向に注目が集まっている。
■24時間サイマル放送以外は何でもOK?
「範囲が広いかな、という印象を受けた」。TBSテレビの石原俊爾社長は10月29日の定例記者会見で、前日に公表されたNHKのルール案について、事実上の懸念を表明した。フジテレビジョンの亀山千広社長も記者会見で「NHKと民放はこれまで2元体制でやってきた。今後も維持してほしい」と語った。
NHKのルール案は総務省が示したガイドラインに沿って、NHKが自主ルールの形でまとめたものだ。ネットでの放送番組の配信について、災害報道や社会的関心に応える番組をネット配信することを「業務の内容」と位置づけている。しかも、財源は受信料でまかなうとしているため、ネットで放送番組を視聴する時は事実上無料となる。そのため、民放からは「民業圧迫にならないようにしてほしい」との声が上がっている。
こうした懸念の声にNHKの籾井勝人会長は今月6日、「実施基準は実施計画ではない」と説明。「民放と対抗するのではなく、協力できる分野は協力したい」と配慮の姿勢を見せた。
ただ、あるNHK関係者は「認められたことをすべてやるわけではない」と断りながらも、「今回の要綱はいろんな解釈が可能だ」と認める。「合理的な理由なく対象を限定しない」「社会的関心に応える」などの文言は概念的で、「(改正放送法が認めていない)24時間の同時再送信(サイマル放送)以外は何でもOKとも読める」(NHK関係者)内容だ。
こうした指摘について、籾井会長は「無制限にネット放送を見られるようにすると、(受信料を払う契約者が減って)自分で自分の首を絞めることになる」と説明する。それでも、民放側の懸念が消えないのは、NHKも民放も「放送と通信の融合」が進んだ後の事業環境を見通しにくいことと裏表だ。
「ネットと放送の融合は避けて通れない。日本だけ日本の事情でやらないわけにはいかない。世界に取り残される」(籾井会長)というNHKのネット戦略を左右する存在は国内の民放ではなく、海外勢だろう。
ネット戦略で先んじ、日本語対応を推進する構えも見せている英国放送協会(BBC)や、世界的に事業を拡大している米動画配信大手のネットフリックス、動画共有サイト「ユーチューブ」などを抱える米グーグルなどの存在感は桁外れに大きい。日本の放送文化をともに築き上げてきたNHKと民放の「2元体制」は環境変化の前に大きく揺れている。
NHKは広告こそないものの、民放ともども、視聴率競争の土俵に乗って番組を制作し、定められた周波数帯の電波を使って番組を放送してきた。しかし、ネットの高速・大容量化やスマートフォン(スマホ)の普及は、映像コンテンツの視聴スタイルを一変させた。
「放送局が編成し、視聴者が番組のために帰宅して見るのは昔の話。今は視聴者が見たい時に見たい番組を見るようになった」(フジテレビジョンの亀山社長)。視聴者にとって、周波数帯や受像機の種類などは関係ない。地上波か、衛星放送か、ネットかも関係ない。その形式が放送番組であるか、個人が投稿したコンテンツであるかさえも関係ない。
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