朝日新聞:「吉田調書」取り消しは妥当 第三者機関が見解

毎日新聞 2014年11月12日 21時27分(最終更新 11月12日 21時40分)

 朝日新聞が東京電力福島第1原発の「吉田調書」に関する記事を取り消した問題で、同社の第三者機関「報道と人権委員会」は12日「重大な誤りがあり、取り消しは妥当だった」との見解をまとめた。木村伊量(ただかず)社長が近く退任を発表し、同社は月内に関係者を処分する方針だ。

 朝日新聞は5月20日朝刊で、政府事故調査・検証委員会が福島第1原発の吉田昌郎所長(当時)から聴取した調書を入手したとして、「所員の9割が所長命令に違反し、第2原発に撤退した」と報じた。しかし、9月11日に取り消した。

 委員会は「大きな意義のあるスクープ記事だったが、記事の根幹部分の『所長命令に違反 原発撤退』の事実は認められない」と結論づけた。

 見解は、調書の「よく考えれば2F(第2原発)に行った方がはるかに正しいと思った」との吉田所長の発言を記事で割愛したことを「公正性、正確性への配慮を欠いた」と批判。さらに、掲載までに調書を読んだのは取材記者2人だけでチェックが不十分だったことや、掲載前日に社内で「命令」「撤退」の表現を疑問視する意見が出ながら修正しなかったことを問題点として指摘した。

 報道後の対応についても「社外からの批判や疑問の軽視、過信による行き過ぎた抗議、危機感の希薄さ、危機管理の著しい遅れを指摘できる」と述べた。

 報道と人権委は長谷部恭男・早稲田大教授(憲法)、宮川光治・元最高裁判事、今井義典・元NHK副会長の3人で構成。従軍慰安婦報道などは別の第三者委員会が年内をめどに提言をする見通しだ。【青島顕、堀智行】

 ◇責任を痛感

 西村陽一・朝日新聞取締役編集担当の話 重大な誤りを引き起こした責任を痛感している。東電福島第1原発の方々をはじめ、みなさまに改めて深くおわび申し上げる。全社員が全力で信頼回復に努めることをお誓いする。

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