朝日新聞:迷走極めた社内対応 「吉田調書」見解

毎日新聞 2014年11月12日 23時43分(最終更新 11月13日 00時23分)

 朝日新聞が東京電力福島第1原発の「吉田調書」に関する記事を取り消した問題で、同社の第三者機関「報道と人権委員会」は12日「重大な誤りがあり、取り消しは妥当だった」との見解をまとめた。「事後対応に関して、上層部の責任が大きい」。見解には、記事掲載後の社内対応の迷走ぶりが記されている。

 デスクを務めた特別報道部の担当次長は掲載翌日の5月21日になって、現場にいた所員への取材を記者に指示した。だが、取材協力は得られなかった。

 記事を批判した週刊誌や産経新聞に抗議文を送る一方、批判に応えようと企画した記事はいずれも暗礁に乗り上げた。そのうち、7月3日にはこの日が応募締め切りだった日本新聞協会賞を意識し、報道の目的を伝える記事の掲載を計画したが、追加取材で「命令違反」の部分を補強できなかった。8月末〜9月初めには1面、総合面、特集面を使った検証報道を計画したが、予定原稿を読んだ編集部門の次長らが「現場にいた人の取材がない」「批判の核心に応えていない」と指摘して再び断念した。

 記事を訂正するか取り消すかも、なかなか決まらなかった。取材記者に取り消しが伝えられたのは、木村伊量社長が記者会見した9月11日当日だった。

 見解は「情報共有が遅れた。無為に時が過ぎ、9月11日に至ったのは遅きに失した」と断じた。【青島顕】

 ◇「吉田調書」記事掲載後の経緯

5月20日 「吉田調書」報道

6月   相次ぐ週刊誌の批判記事に抗議

7月3日 報道の目的を示す記事掲載を計画するも断念

8月   産経新聞の批判記事に抗議

  下旬 新聞各社が批判記事を掲載

     編集幹部が「事態は深刻」認識

9月初め 検証紙面掲載を断念

  5日 編集幹部が「おわび」を決断

  11日 未明、記事取り消しを決定

     夜、社長が記者会見

※「報道と人権委」の見解による

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