産科医不足:9県で深刻化 35歳未満も地方で低く

毎日新聞 2014年11月12日 20時33分(最終更新 11月12日 23時14分)

 お産を扱う産科医不足が福島、岐阜、和歌山など9県で深刻化していると、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が12日、発表した。産科医の数や年齢、分娩(ぶんべん)数などを初めて都道府県別に分析した。産科医のうち35歳未満の割合は特に地方で低く、将来の産科を担う医師の確保が厳しさを増している。

 調査によると、今年3月末現在、全国の分娩施設で働く産科医は9702人(男性6233人、女性3469人)。人口10万人当たりの産科医は東京や沖縄が11.1人なのに対し、茨城(4.8人)、福島(5.0人)、埼玉(5.3人)は半数以下だった。

 35歳未満の割合は石川の13%が最も低く、次いで宮崎14%、福島15%。東京(37%)や兵庫(38%)に比べ、3倍近い格差があった。分娩数や産科医への就業率などの6指標で分析すると、「現状が厳しく、早急な対策が必要」とみられる自治体は9県とした。福島は東日本大震災や原発事故の影響で、医師が少なく高齢化。医師1人当たりの分娩扱い数は都道府県の中で2番目、手術数は3番目に多かった。岐阜は産科への就業率が低く若手が少ない。和歌山は医師が高齢化し手術件数が多かった。

 さらに、2024年の医師数も推定したところ、26府県で減少すると試算された。

 背景として、夜間や休日の対応が多いために産科を敬遠する傾向があるほか、04年度に導入された医師臨床研修制度で研修先の選択肢が広がり、若手が都市部に集中したためとみられる。調査した日本医科大の中井章人教授は「少子化対策が重視される中、安心して出産できる場を確保するために、研修医の産科への就業を促し、適正な配置を目指す必要がある」と話す。【下桐実雅子】

◇現状が厳しく早急な対策が必要な9県

 産科医人数 35歳未満の割合

(人口10万人あたり)(%)

福 島 5.0    15

千 葉 6.0    23

岐 阜 6.6    17

和歌山 6.9    23

広 島 6・2    21

山 口 6.5    19

香 川 6.9    23

熊 本 7.3    22

大 分 7.1    18

全国平均7.6    27

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