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「早寝早起きが健康にいい」はウソ! 睡眠のプロが語った、眠りにまつわる4つの迷信

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「早寝早起きが健康にいい」はウソ! 睡眠のプロが語った、眠りにまつわる4つの迷信

ストレス、飲酒やドラッグへの依存など様々な健康被害をもたらす睡眠不足。「眠り」について研究する神経科学者のRussell Foster(ラッセル・フォスター)氏が、世間の間違いだらけの睡眠に関する知識を正し、健康的な睡眠方法を紹介します。(TEDより)

【前編】「寝不足を甘く見るな!」 神経学者が語る、あなたが毎日ぐっすり眠るべき3つの理由

【スピーカー】
 

【動画もぜひご覧ください!】
Russell Foster: Why do we sleep?

ほとんどの子供が5時間しか睡眠をとっていない

それでは、睡眠不足について考察してみましょう。大半の人が睡眠不足を経験しています。睡眠の測定結果を見てみましょう。

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1950年代にはほとんどの人が約8時間の睡眠をとっていました。今はそれよりも1時間半から2時間少なく、6時間半です。10代になると、もっとひどい結果が出ています。10代の若者の脳が完全に活動するには、9時間の睡眠が必要なのですが、ほとんどの子供が、特に学校のある日には5時間しか睡眠をとっていません。これでは不十分です。

社会の他の部類に属する人たちを見てみましょう。お年寄りはどうでしょうか。お年寄りは1度に眠る能力が衰えて、何度にも分けて、一晩に5時間未満の睡眠時間となっています。交代制の仕事に就いている人たちの結果もひどいものです。

労働人口のおよそ2割にあたる人たちということになりますが、体内時計は夜間勤務の要請に合わせた調整はされません。仕事時間にかかわらず、明暗のサイクルは皆と変わりません。夜間勤務を終えて、ひどく疲れた体で帰宅して昼寝をしようとするのですが、体内時計は起きるようにと指令を出します。今は起きている時間だぞと、体が指令を出すのです。その結果、夜間勤務者の眠りは非常に質の悪いものとなり、時間も5時間程度です。

そしてもちろん、何千万人もの人が時差ボケに悩まされています。今まさに時差ボケ中だという方はいらっしゃいますか? 大変ですね。居眠りしないでいてくださってありがとうございます。脳は居眠りをしたがっているはずですからね。

無意識のうちに眠りに落ちる「マイクロ睡眠」

脳が果たしている役割のひとつに、マイクロ睡眠があります。無意識のうちに眠りに落ちることをいうのですが、これをコントロールすることは基本的に不可能です。マイクロ睡眠には戸惑うところがあるどころか、命取りとなる場合もあります。

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車を運転する人の31%が、一生のうちに1度は運転中の居眠りを経験するという統計結果があります。アメリカでは、高速道路で起きた事故のうち10万件が、疲労や不注意、居眠りが原因と言われています。1年で10万件です。桁外れの数字です。

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また別の次元での恐怖で言うと、チェルノブイリや、スペースシャトル・チャレンジャー号の惨劇に関しても、交代勤務に無理が生じた結果、注意力が散漫になり、疲労が蓄積したことによる判断力の低下が大きな原因とされています。疲労と睡眠不足から記憶力が低下し、想像力も乏しくなり、衝動的に行動することが多くなって、判断力も鈍ります。

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脳は疲れてくると、興奮剤の助けを借りるようになる

でも、その程度では済まないのです(笑)。脳は疲れてくると、覚醒させてくれるものを求めるようになります。

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ドラッグ、興奮剤といったものです。西洋では興奮剤としてカフェインが一般に好まれています。カフェインの力を借りて1日の大半を乗り切ります。脳が本当にもうどうしようもなく疲れてしまった時は、ニコチンです。

もちろん、こうした興奮剤の助けを借りて起きていても、やがて夜の11時になって、脳はこう考えるようになります、「ああ、もうすぐ寝なくっちゃ」。そんな時に非常に興奮していると、私たちはどうしますか? そう、アルコールに頼ることになります。

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アルコールは、気持ちを落ち着けるために少々たしなむ程度には非常に効果的です。実際、眠りに誘ってくれます。

しかし、アルコールは眠りを与えてくれるものではありません。生理的な眠りの模倣を与えてくれるものでもありません。気持ちを静めるだけです。実際には、記憶の定着や想起の際の神経活動にとって障害になっています。

つまりアルコールは、短期的な利用に限定した、その時限りの手段にすぎないのです。ですから、眠るためには毎晩アルコールに頼らないといけない、ということにはならないようにしてください。

睡眠不足は肥満につながる

もうひとつ、睡眠不足と関係があるのは、体重の増加です。毎日の睡眠時間が5時間以内の場合、50%の確率で肥満になります。ここにはどんな関係があるのでしょうか。睡眠不足になると、空腹感に関連するグレリンと呼ばれるホルモンが分泌されるようです。

分泌されたグレリンは脳に到達します。すると脳は炭水化物を求めます。そしてどうなるかというと、炭水化物、特に糖質を欲するようになるのです。体重増加につながる代謝傾向と疲労には関連があるのです。

そしてストレスです。疲れた人は大きなストレスを抱えています。ストレスの特徴のひとつに記憶障害があります。度忘れするようになるのです。しかし、ストレスの怖さはそれだけではありません。

突発的なストレスは大きな問題ではありません。しかし睡眠不足によるストレスが長引くと問題です。ストレスを抱えたままの状態が続くと、免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。交代制の労働者などは癌の発症率が高いとする研究結果もあります。

ストレスレベルが高くなると、血液にグルコースが送り込まれ、血糖値が高くなり、グルコース耐性が低下します。その結果、2型糖尿病になります。ストレスで血圧が上昇し、心臓血管疾患にかかりやすくなります。

睡眠不足が原因で、実にさまざまなことが引き起こされるのです。脳が若干正常に機能しなくなるという程度ではありません。しかし大半の人は、睡眠不足による影響はその程度だと考えているようです。

サルでもわかるよく眠れる方法

ここで少し考えてみましょうか。普段から自分は十分な睡眠をとっているという方はいらっしゃいますか? 挙手をお願いします。ちゃんと睡眠をとっているという方? そうですか、素晴らしいですね。どうすればちゃんとした睡眠がとれるかということについては、また後でお話しましょう。

もちろん、「自分が十分な睡眠をとっているかどうか、どうすればわかるのか」という質問も出てきますね。難しいことではありません。

朝になってベッドから起きるのに目覚まし時計は必要ですか? 起き上がるのに時間がかかりますか? 興奮剤はたくさん必要ですか? 怒りっぽくありませんか? イライラしていませんか? 疲れていて不機嫌そうだと同僚から言われていませんか? 思い当たる方は睡眠不足です。周囲や自分の声に耳を傾けてください。

どうすればいいのでしょうか。

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気を悪くなさらないでいただきたいのですが、「サルでもわかる睡眠方法」をお教えしましょう(笑)。寝室を眠りのための安息の場とするのです。まず必要なのは、できるだけ暗くして、温度は少し涼しいぐらいに調整することです。非常に重要なことです。

そして、ベッドに入る少なくとも30分前から光を浴びる量を減らしていきます。光は覚醒レベルを高め、眠りに入るのを妨げます。

たいていの人がベッドに入る前に行なうことは何でしょう? 明るい光に照らされた浴室で鏡を覗き込み、歯を磨きます。眠る前の行為として、これ以上によくないことはないでしょう。携帯電話はオフにします。

パソコンの電源も切ります。脳を刺激するものはすべて電源を切ります。あんまり遅い時間にカフェインを摂取するのもやめましょう。できればランチの後はとりたくないですね。

眠る前に光の量を減らす準備はこれで整いました。しかし、朝になったら光を浴びて、体内時計を明暗のサイクルに合わせて調整します。朝は光を浴びるようにするのです。基本的には、自分の声に耳を傾けるということです。落ち着いて、蜜のように甘い眠りに身を委ねられることをするのです。

以上、事実についてお話しました。

眠りに関する4つの迷信

迷信についてはどうでしょうか。

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10代の若者は怠け者だとよく言われます。そんなことはありません。誤解です。彼らが寝るのも起きるのも遅いのは、生理的な傾向としてそうなっているからなのです。勘弁してあげてください。

人間は1日に8時間の睡眠を必要としています。これは平均値です。それ以上必要な人も、それほど必要でない人もいます。大切なのは自分の体に聞くことです。これで十分なのか、もっと必要なのか。単純なことです。

年を取ると睡眠時間が少なくて済む、というのも事実ではありません。年配者でも必要な睡眠時間は減りません。眠りが途中で分断されて、まとまった睡眠量をとることは難しくなりますが、必要な時間が減るということはありません。

4つ目の迷信は、早寝早起きをすれば健康で金持ちで頭もよくなるというものです。これはもういろんな意味で間違いだらけです。

(会場笑)

早寝早起きをすれば金持ちになれるだなんて、そんな証拠はどこにもありません。社会経済的な地位においては、どんな違いもありません。私の経験から言って、朝型の人間と夜型の人間の唯一の違いは、朝型の人間は気取っているということぐらいです。

(会場笑)

統合失調症と睡眠の関係性

もう少しお時間があるようですから、少し観点を変えて、神経科学の分野における最新の研究内容についてお話しましょう。心の健康と不健康、それと睡眠障害の関連についてです。

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ひどい精神疾患と睡眠障害との関連は、130年前からわかっていました。しかしほとんど無視されてきたのです。1970年代に入ってこの問題が再び取り上げられると、「統合失調症に睡眠障害がつきものなのは、抗精神病薬を飲んでいるからだ。睡眠障害の原因は抗精神病薬だ」とされました。抗精神病薬が登場する100年も前から睡眠障害が報告されているにもかかわらずです。

何が起きているのでしょうか。複数のグループが、鬱、統合失調症、躁うつ病について、睡眠障害という観点から研究しています。統合失調症に関しては、昨年大きな研究結果を発表しました。そのデータは極めて興味深いものでした。

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統合失調症を患っている人は、たいていの場合、夜に起きて昼間に眠っているというのです。

別のグループによる研究結果では、24時間サイクルと呼べるものが一切見られませんでした。睡眠が完全に損なわれているのです。明暗のサイクルで眠りを調整することができない人もいました。起きるのがだんだん夜遅くなってきて、最終的には眠れなくなります。

何が起きているのでしょう。精神疾患と睡眠は単に関係があるというだけでなく、脳内で物理的につながっているという報告にも注目したいです。本来の眠りをもたらす神経ネットワークによって、私たちは通常の眠りに誘われるのですが、心の健康に関連したネットワークと重なり合う部分があるというのです。

睡眠障害は精神状態に悪影響を及ぼす

その根拠は何でしょうか?

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本来の眠りをもたらすうえで非常に重要とされている遺伝子が突然変異を起こすと、心の健康状態に問題が生じるのです。

私たちは昨年、統合失調症と関連づけられている遺伝子が突然変異を起こすと、眠りの妨げになるという研究結果を発表しました。つまり、これら2つの重要なシステムの間には、正真正銘の重なりがあるということが証明できたわけです。

これらの結果をもとにして、他にもいくつかの研究を行ないました。

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まず、睡眠障害は実際に、ある種の精神疾患の前兆となっているというもので、双極性障害の可能性が高い若い人たちは、その診断を受ける前から睡眠障害が見られることを証明しました。別のデータでは、睡眠障害は心の精神状態に悪影響を及ぼし、悪化させるということもわかっています。

同僚のダン・フリーマンは、眠りを安定させるためにさまざまな物質を用いて、パラノイアのレベルを50%改善させました。こうした関連から、とても興味深いことがわかってきました。これら2つのシステムにおける精神科学を理解することで、私たちは眠りや精神疾患が脳内でどのように発生し、制御されているかということを突き止めつつあります。

2つ目は、眠りと睡眠障害を早期の警告シグナルとして活用できれば、解決の糸口が見つかるかもしれないということです。その人が病気にかかりやすいかどうかがわかれば、早期治療が可能になります。

3つ目は、私が1番着目している点なのですが、脳内の睡眠中枢を新たな治療対象にできるということです。病気にかかりやすい人の眠りを安定させることで、健康な状態に近づけるだけでなく、精神疾患の恐ろしい症状も少しは緩和することができるのです。

眠りの神経科学を理解し、実践すべき

まとめに入りましょう。

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私は最初に、眠りを真剣に考えましょうと言いました。眠りに対する私たちの意識は、産業革命以前と比べると大きく変化しました。当時は羽根布団にくるまって眠っていました。眠りが必要だということを本能的に理解していたのです。

これは意味のないことではありません。健康に対する現実的な対応と言えます。睡眠が十分にとれていれば、集中力が増し、注意力も高まり、決断力や想像力、社交性、健康も改善されます。

眠ることで、情緒の変調、ストレス、怒り、衝動性、飲酒やドラッグへの依存、といったことを抑えることもできます。

最後に申し上げますが、眠りの神経科学を理解することは、精神疾患の原因を考えるうえで非常に有益なことです。実際、私たちの健康状態に悪影響を与えるこうした症状に対処するための新しい方法が見つかることもあります。ファンタジー作家のジム・ブッチャーは、「眠りは神である。崇拝せよ」と言っています。

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皆さまにもこれを実践されるよう、おすすめします。ご清聴ありがとうございました。

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