東電優位の連携続く/第14部・東北電の難路(3)協調

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東電優位の連携続く/第14部・東北電の難路(3)協調

東北電が再稼働を目指す東通原発。稼働すれば電力の半分は東電に送られる=青森県東通村

<「請求はポーズ」>
 「東京電力に1回目の賠償請求を行う」。東北電力の海輪誠社長はことし3月の記者会見で、用意した文書を淡々と読み上げた。
 金額は1億7000万円。内訳は東電福島第1原発事故に伴う事業所の移転費用などだった。今後、営業損失を追加で求める可能性もある。
 原子力災害では、東北電も被害者となった。福島県内の電力需要の1割程度を喪失。事故に伴う損害賠償支援機構への負担金も2013年度までに223億円に上る。
 賠償請求は同業者間の対立を思わせるが、東北電内は「請求はポーズにすぎない」との見方が支配的だ。社員の一人は「東電はこれからも重要なパートナーであり続ける」と断言する。

<経営基盤支える>
 一枚岩を誇る業界内でも、2社は密接な協力関係で知られる。1958年に「電力の広域融通」を掲げたのを機に、発電プラントの共同開発で歩調を合わせてきた。
 元役員は「供給エリア(東北6県と新潟県)に東電の発電所が造られることへの抵抗感もあった。解決策として有効な手法だった」と明かす。
 東北電は60年代初めに経営難に陥り、国会で東電との合併論が噴出する事態を招いている。協調による投資コストの圧縮は、避けられない選択だった。
 豊富な資金を誇る東電にしても、電源開発の適地不足は深刻な問題だった。業界のリーダーとして東北電を援護射撃する意味合いもあった。
 東北エリアの共同開発のプラントは計13基まで増えた。東北電の女川、東通、東電の福島第2、柏崎刈羽の各原発も含まれる。
 ただ、実態は東電の方がはるかに多くのメリットを得てきた。
 東電の2原発から東北電が受け取るのは出力110万キロワット分。一方の東電は女川、東通原発に加え、原町火力からも融通を受ける。自前で備えた発電所などを加えれば、東北エリア内の供給力は2510万キロワットに達した。
 「転出超過」の電力が、首都圏の膨大な需要を賄う。東北が東電の経営基盤を支えてきたのは紛れもない事実だ。

<挑戦せぬ雰囲気>
 協力関係は、次元の異なる局面でも作用した。
 その一つが情報収集だ。国の方針などを探るため、東北電による東電参りが慣例化してきた。経済産業省や国会との強力なパイプには、太刀打ちなどできなかった。
 「東電はエネルギー政策を左右できるほどの存在。困ったら頼る。貴重な情報源でもあった」と元執行役員が明かす。
 「電源開発」という名の土地貸しと情報の偏在からは「東電優位」の連携の実相が浮かび上がる。「東電にはかなわないし、挑戦もしない雰囲気が根付いている」。平然と語る社員の口ぶりに、両社の関係が変わる兆しは見えない。


2014年11月12日水曜日

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