夫婦のどちらかが子どもを国外に連れ出した場合の扱いを定める「ハーグ条約」に基づき、日本人の母親とともに日本に帰国していた男児(5)が10月中旬、ドイツに戻されていたことがわかった。外務省によると4月の同条約加盟後、日本から海外に子どもが返還されたのは初めてという。

 男児はドイツ人の父親と日本人の母親とドイツで暮らしていたが、今年6月、母親が父親の同意なしに男児を日本に連れて帰った。父親が8月下旬、ドイツ当局を通じて日本外務省に男児の返還に向けた支援を求めた。同省の仲介で父母が協議して合意したため、母親が男児をドイツに連れて行った。

 同省によると、外国に連れ去られた日本人の子どもがハーグ条約に基づいて日本に戻された事例は3事例。英国とスイスの裁判所が日本への返還を命じた2事例のほか、日本人の母親が米国に連れて行った男児が、話し合いのうえで日本に戻された事例があるという。

 同条約には、日本など93カ国が加盟。どちらかの親が16歳未満の子どもを無断で国外に連れ出した場合、原則として元々住んでいた国に子どもを戻した上で、誰が面倒を見るかを裁判などで決める。(杉崎慎弥)