ＪＲ西日本は１２日、福井県敦賀市泉の敦賀駅構内で、北陸新幹線への導入を目指しているフリーゲージトレイン（ＦＧＴ、軌間可変電車）の実験線を公開した。同社は２０２５年度予定の敦賀開業に合わせＦＧＴの開発を進めているが、開業時期が前倒しされた場合には導入が間に合わないとの見解を示した。
開発責任者の田仲文郎・鉄道本部技術開発部長は「ＦＧＴは全く新しい技術であり、北陸では雪対策など難しい課題がある。安全に走らせ続ける技術的な土台を実験線を通じて得たい」と説明。一方で政府・与党が議論している前倒し開業が実現した場合について「技術開発と車両や地上側設備の準備は、当初の開業予定でもぎりぎりというイメージ。前倒しは厳しい」と述べた。
実験線は全長約１８０メートルで、両端５５メートルがそれぞれ新幹線軌道（幅１４３５ミリ）と在来線軌道（同１０６７ミリ）となっている。中間付近の軌間変換装置（６８メートル）を通過する間に、電車の車輪幅が変わる仕組み。
軌間変換試験は１０月９日に始まった。けん引車につないだ模擬台車を時速１０キロほどで繰り返し走行させて、可動部分の強度や耐久性などデータを収集している。
ＦＧＴは北陸に先行して九州新幹線長崎ルートで導入予定で、ＪＲ九州などが試験車両での走行試験を行っている。北陸新幹線の車体も基本構造は同じだが、冬季の降雪や低温に備え、ダンパーなどの可動部分をカバーする対策を施すという。また、１２月下旬から年明けには消雪試験線を整備し、人工降雪機を用いて消雪技術の開発に取り組む。
これらの結果を反映させた試験車両を製造し、２０１６年度から北陸新幹線や湖西線で走行試験を行うという。