検証・四つの原則に関する合意文書
どちらがウソをついているのか
福島 香織
ちなみに国際社会はどう受け取っているのだろう。ウォールストリートジャーナルは「どっちがゆずった? 中国、日本、翻訳の微調整で勝利宣言」といった見出しで、双方の英訳の違いに言及している。
国際社会には中国的英訳
3にある「異なる主張」(不同主張)は、日本側がdifferent views(日本語版では『異なる見解』)、中国側がdifferent positions。共通認識2にある政治的障害を克服すると「若干の共通認識」(一些共识)については、日本版英訳が「shared some recognition that they will overcome political difficulties.」。中国版英訳は「reached some agreement to overcome political obstacles」。少なくとも中国側英訳だけをみれば、共通認識3において「異なる主張」とは領有権に関する立場の違いであり、双方はそれを「acknowledged」(日本版英訳recognaized)した、ということで中国の領有主張の立場を日本は渋々ながら認めたんだなという印象になる。日本版英訳を先に読んでいれば、双方に見解の相違があるということは知っている、程度の軽さに印象が変わる。ちなみにWSJでは、尖閣の主権が日本にあるとは一言も書いていない。「日本がコントロールしている島嶼」という表現だ。
国際社会はたいていの場合、英語で認識を共有するが、日中の解釈、どちらが国際社会に流布するだろう。おそらく中国側の方である。中国がホスト国として行われる会談での合意であるし、もっと簡単に言えば、フォーブスの世界で「最も影響力のある人物100人」のトップ3がプーチン、オバマ、習近平の順で、安倍首相が63位という影響力の差である。
結局、習主席と会談したかった安倍首相(あるいは安倍首相を会談させたかった官僚)が、微妙なぎりぎり妥協できる政治文書を練り上げて、なんとか会談の約束を取り付けた、と言う風に見えてしまうのだった。うまい官僚文書のお手本だと褒める声もあるが、本当に前提条件無しならば、事前に合意文書発表などしない。シンプルだがあれだけインパクトある合意文書が発表されたあとでは、会談そのものがかすんでしまうではないか。