円が7年1カ月ぶり安値圏、解散や増税延期観測で売買交錯
11月12日(ブルームバーグ):東京外国為替市場では、円が対ドルで約7年1カ月ぶりの安値圏で上下した。衆院解散や消費増税延期をめぐる観測を背景に、円は売り買いが交錯する展開となった。
午後3時45分現在のドル・円相場は1ドル=115円34銭前後。朝方は円売りが先行し、一時116円01銭と11日の海外市場で付けた2007年10月以来のドル高・円安水準にあと9銭と迫った。その後、市場観測に水を差すような菅義偉官房長官の発言が報じられ、日本株が上げ幅を縮小したのに伴い、115円台前半まで円が反発。午後もいったん115円台後半まで戻した後、再び円買いが優勢となり、3時すぎには115円10銭を付けた。
JPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉チーフFXストラテジストは、「完全に決め打ちになってしまっていて、消費増税延期、解散総選挙であれば株高・円安、そうでなければその反対と、少なくとも足元ではそうなってしまっている」と指摘。国内総生産(GDP)を見て本決まりとなる来週までは「右往左往する展開となるかもしれない」と話した。
ユーロ・円相場は一時1ユーロ=144円71銭と1月2日以来の水準まで円売りが先行した後、143円67銭まで円の買い戻しが進み、同時刻現在は143円98銭前後。一方、ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.24ドル台半ばから後半へドルが弱含みとなった。
衆院解散・消費増税延期産経新聞は、安倍晋三首相が月内に衆院を解散し、12月中に総選挙を断行する意向を固めたと報じた。消費税率10%への再引き上げについては1年半後の17年4月に延期する方針を決定したという。17日公表の7-9月期のGDP速報値が悪いとみられているため、景気動向の下振れを回避し、政権が最重要課題に掲げるデフレ脱却と経済再生を優先させるとしている。
一方、菅官房長官は午前の定例会見で、消費増税延期の一部報道について、GDP1次、2次の速報値を見定めたいことに変わりはないと述べた。また、解散は総理の専管事項で言うべき立場ではないとし、自身は選挙準備は全くやっていないと話した。
この日の東京株式相場は続伸。もっとも、日経平均株価 は日中の年初来高値を更新後、午後の取引終盤に上げ幅を縮めた。前日の東京市場では、消費増税延期で景気腰折れが回避されるとの観測から日本株が急騰し、円は全面安となった。
HSBC証券債券営業本部の城田修司マクロ経済戦略部長は、「消費再増税が遅れそうで、それは短期的には景気にポジティブであると株式市場も好感して連鎖反応的に円が売られている」と説明。「日銀の追加緩和でドル・円が押し上げられ、今回の政治面での動きももう一段階円安へドル・円の水準を押し上げた。ただし、追加緩和よりも今回はあまりマグニチュードとしては大きくないのではないか」と話した。
自民党の選挙対策に詳しい関係者2人が非公式な情報であることを理由に匿名で明らかにしたところによると、安倍首相が衆院を解散した場合、投票日は12月14日の方向で調整される見通し。
ノムラ・インターナショナルの後藤祐二郎シニアFXストラテジスト(ロンドン在勤)は、安倍首相の最終判断まで「早期解散や増税延期といったストーリーを意識せざるを得ないというのがあと1週間ぐらい、来週火曜くらいまでは少なくとも続く」と指摘。ドル・円は政局絡みで「ボラタイルな動きになるリスク」があるものの「基本的な方向感としてのドル高・円安は変わらない」と語った。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 小宮弘子 hkomiya1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Garfield Reynolds greynolds1@bloomberg.net 青木 勝, 崎浜秀磨
更新日時: 2014/11/12 15:46 JST