【ロンドン=小滝麻理子】外国為替相場の指標が不正に操作されていた疑惑を巡り、英国、米国、スイスの金融監督当局は12日、米国のシティグループやJPモルガン・チェースなど6つの大手銀行に合計約43億ドル(約5000億円)の罰金を科したと発表した。約1年に及ぶ調査で当局が罰金を科すのは初めて。ほかの大手銀への調査も続いており、罰金の総額はさらに膨らむ見通しだ。
為替操作疑惑が浮上したのは昨年秋。一昨年に問題となったロンドン銀行間取引金利(LIBOR)不正操作に続く金融不祥事に発展した。
英金融行為監督機構(FCA)によると、各行の一部の外為トレーダーは2008年1月から2013年10月にかけて、顧客の外為持ち高などに関する情報を共有。自分たちの利益になるように不当に「WM/ロイター」など外為市場の代表的な為替レート指標を操作しようとしていた。
外為市場の取引高は1日平均で約5兆3千億ドル。不正な操作で相場がゆがめられていたとすれば、多くの企業や投資家に影響を及ぼす。
罰金の対象となったのはシティ、JPモルガンのほか、スイス・UBS英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)、英HSBC、米バンク・オブ・アメリカの4行。
FCAが英当局として過去最大となる合計17億ドル強、米商品先物取引委員会(CFTC)が同14億ドル強、米通貨監督庁(OCC)が同9億5000万ドル、スイス金融当局はUBSに対し1億3800万ドルの罰金を科した。
英中央銀行は同日、トレーダーらが情報を交換していたことの報告を怠ったとして、同中銀の主任為替ディーラーを解雇した。直接不正には関わっていないとしている。
ただ、これで終わったわけではない。今回罰金が決まった6行を含めて10前後の銀行の関与が取り沙汰され、欧米アジアの複数の当局が調査中とみられている。
当局の調査対象だった英バークレイズは当局との協議を今後も続ける意向。ドイツ銀行やスイスのクレディ・スイスなどほかの大手行も、7~9月期決算で相次ぎ外為不正取引を念頭に訴訟対応費用を引き当てており、今後も罰金などが続きそうだ。
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