■電子出版では紙出版ほどの収入は得られない
そこで、立場を変えて、一人の作家、本を書いてそれで生計を立てている人間として考えると、やはり、アマゾンのやり方には違和感を覚える。なぜなら、作家はこれまで出版社を含む紙メディアを通して、原稿料や印税をもらってきたのであり、その原稿料や印税が、アマゾンのような流通を独占する企業によって著しく低下する事態が起こっているからだ。
たとえば、作家が出版社から紙の本を出した場合、受け取る印税は、本の定価×刷り部数×印税率(定価の10%)である。定価1000円で刷り部数1万部なら、100万円ということになる(便宜的な計算)。
しかし、これをアマゾンで直接電子出版するとなると、電子書籍は再販商品ではないので、定価をつけることはできない。また、電子書籍の値段は、よくて紙書書籍の7掛け以下なので、仮に500円としてみると、1万ダウンロードされた場合、どうなるだろうか? アマゾンは最大で売上の70%しか払ってくれないので、500円×1万×0.7=350万円となり、紙の場合の収入の約3分の1になる。
さらに、紙の場合は売れても売れなくても刷り部数で支払われる(そうでないこともある)が、電子書籍は売上でしか支払われないので、収入はさらに減る。ちなみに、現在、紙を出してそれが電子化された場合、作家がアマゾンが出版社に支払う販売売上から受け取る額は、多くて総売上の2割である。
■アマゾンはコンテンツづくりには不熱心
つまり、仮にこの世の中に電子書籍しかなくなれば、多くの職業作家が消えていくのは間違いない。作家も2極化が進み、紙の世界でなら存在できた職業作家は、かなりの数が生活できなくなる。同じく、出版社も消えていく。
これまで紙の世界で作家が生計を立てられたのは、雑誌等の原稿料、書籍による印税収入、それに副産物として映画やドラマの原作料、講演会による講演会料等の収入があったからだ。
しかし、電子の世界では、副産物は別として紙のような収入は得られない。アマゾンは、この問題を解決してくれない。アマゾンは、コンテンツを自ら生み出すことに熱心ではないし、また、それに本気で投資しようとはしていない。最近は、KDPによるダイレクト出版を既存作家に持ちかけているが、それでも出版社のように作家を直接的に支援しようとはしていない。
2014年11月11日