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美術館で抽象画を鑑賞したとき、子供がいる親なら誰でも、こんなの自分の子だってできると思うだろう。有名な巨匠が描いた作品であっても、子供が指で奔放に書き殴った落書きと大差があるようには見えないはずだ。現代美術はますます概念化する傾向にあり、一体何が偉大な芸術たらしめるのか理解することは実に難しくなっている。
最近ニューヨーク、マンハッタンで開かれた7歳の抽象画家アリータ・アンドレちゃんの個展では、一つの作品に数百万円の値が付けられている。前にもお伝えしたかとおもうが、彼女はアーティストである両親の影響もあり、生後9か月で筆を持ち、2歳から本格的に作品制作をし、世界的に注目を集めた天才抽象画家である。(関連記事)
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ニューヨークのアートシーンにおけるこうした現象は、さらなる疑問を突きつける。一体子供を芸術の神童に育てるにはどうすればいいのだろうか?さらには、作品の価値において芸術家本人はどの程度影響を与えているのだろうか?例えば、アリータちゃんの作品には数百万円もの価格が付けられるが、これは画家がただ幼いことが理由なのではないだろうか?
彼女の父親によれば、アリータちゃんは歩き出すより、描き出すほうが早かったようだ。生後9ヶ月のとき、カンバスの上にハイハイして「絵の具で汚して回った」そうだ。1年もすると60点ほどの作品が完成し、写真家でもある母親のニッカ・カラシニコワさんはこれをメルボルンにあるギャラリーのディレクターに見せてみようと思い立った。
アリータちゃんの作品を紹介するとき、母親は女性のアーティストだとだけ告げた。だが、作品を観たディレクターはすぐにでも彼女のプロフィール写真と一緒に展示すると返答した。展示会のプロモーションで、アリータちゃんの正体を白状せざるを得なくなった。ディレクターは同僚と相談することにしたが、結局、予定通り幼児が描いた作品を展示する運びとなった。
アリータちゃんが4歳のとき、NYチェルシーのアゴラギャラリーで「プロディジー・オブ・カラー」と題された個展を3週間開くことになった。個展には24作品が展示され、40万〜100万円で完売した。この界隈では特に目立った価格ではないとは言え、4歳児が描いた作品としては破格だろう。
同年6月、「シークレット・ユニバース」という2回目の個展も開催された。ここでは「複雑だがとっつきやすく、洗練されているが奔放」と評され、作品の1つに前回を上回る約140万円の値が付いた。なお、彼女の両親によれば、これまでで最も高額で売れたのは60×153インチのアクリル画で、約580万円だったそうだ。
「一見、芸術家の抽象画は子供や動物の落書きにも見えます」と語るのは、ハーバード大学大学院の心理学者エレナ・ウィナー博士だ。しかし、彼女が2011年に発表した研究によれば、絵画の訓練を受けていない成人でもプロの作品と子供や動物の落書きを区別することができるそうだ。正答率は100%ではないが、それでも統計的には有意な結果がでており、抽象画はたんなる子供の落書きに過ぎないという見解に疑問を投げかける。
子供の認知と芸術を長年研究してきたウィナー博士によれば、子供ならだれでも美しいアートを残せるとは言え、真に才能のある神童は作品を仕上げる執着心が段違いで、技術を磨きながら何時間も過ごすそうだ。こうした執着心を博士は”修得へ向ける激情”と呼んでいる。その一方で、一般的には彼らは写実的に描こうとすることが多く、また作品を誰かに見せようという意識もない。
ニューヨーク市立大学の心理学者ジェニファー・ドレーク博士は「才能とは描くことに対する強烈な衝動です」と話す。才能ある子供たちは、朝起きてから寝るまで四六時中描き続ける。そして、人に見せようという気は毛頭ない。ある7歳の子供は学校の黒板にリアルなトランスフォーマーを描いた後、躊躇せずに消し、また描き始めていたそうだ。
ドレーク博士の研究によれば、こうした超写実的な絵を描く能力には、IQ、年齢、性別、訓練のいずれも関係がない。博士が”早熟なリアリスト”と呼ぶ子供たちは、全体像を描くことなく、いきなり細部に取りかかる能力があり、単なる才能がある子と神童を区別する指標となる。
しかし、数学や音楽の神童と違い、芸術の神童は発見するのが極めて難しい。30人の神童を追跡調査するオハイオ州立大学のジョアン・ルスサッツ博士だが、芸術の天才児は5人しか発見していない。同博士によれば、天賦の才は子供をアイドルに仕立てたい親が作り出せる類いのものではないそうだ。天才児は一般の子供とは生物的な差異があり、絵画やピアノの演奏など、どんなときでもそれぞれの作品へ向かう執着をむき出しにする。
アリータちゃんの家族は、彼女の”修得へ向ける激情”の記録を残そうと努めてきた。あるビデオには、「私は24時間でも描くわ」と語るアリータちゃんが映し出されている。この点は無視することができない。
Aelita Andre Gallery 151 video
神童研究の先駆者として知られるタフツ大学のデビッド・ヘンリー・ヘルドマン博士によれば、神童は、若くして、通常は10歳未満で高度に複雑なことや、文化的に価値があるとされものを修得した者と定義される。彼によれば、これは文化的な協力が必要である。当然、本人の資質や訓練、忍耐のほか、子供の才能を育みたいという両親の思いが必要であるが、それに加えこうした子供たちを支える文化がなければ神童は現れないのだという。
また同博士の研究では、神童のIQは実にまちまちだという。例えば、芸術の神童の場合、IQは平均程度であることが多いが、数学の神童のIQは並外れて高い傾向にある。とは言え、彼の研究においてさえも世界でせいぜい50人程度を調査したに過ぎず、結論めいたことを言うことはできない。
歴史上最も有名な芸術の神童は9歳で『ピカドール』を描いたパブロ・ピカソだろう。彼は「ラファエルのように描くには4年かかったが、子供のように描くには一生かかる」と述べたことでも有名だ。子供時代のピカソと同様、アエリータちゃんの芸術の旅もまだ始まったばかりだ。おそらく彼女は21世紀において最も革新的で、影響力のある芸術家としてその名を残すだろう。だがそんな期待など自由気ままに裏切り、彼女が夢だと語る古生物学者へ突然鞍替えすることもあるのかもしれない。
via:theatlanti・原文翻訳:hiroching
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コメント
1.
2. 匿名処理班
子供の落書きと片付けるにはあまりにすばらしい作品だと思う。少なくとも私が見よう見真似で同じことをしても絶対まねできない配色センスだ
3. 匿名処理班
落書きには見えない。
こんな絵は誰しもが描けるわけじゃない。
4. 匿名処理班
絵が好きで幼稚園のころからよくお絵かきをしていた
高校まで美術部で描いていたが
それまで出会った絵の上手い人たちは
たしかに全員、人から褒められるか褒められないかはモチベーションに関係なく
毎日飽きもせずに描きたいだけ描いていた
ほかの分野の「上手い人」も多分そうなんだろう
5. 匿名処理班
どうせヨイショされてるだけだと思いきや、すごい絵だったんだが
才能の為せる技ですかね
6. 匿名処理班
強烈な衝動ってのはなんかわかるなあ
7. 匿名処理班
ゾウとかチンパンジーやオラウータンが絵具撒き散らして描いてる絵と何が違うの?
8. 匿名処理班
バイオリンに絵の具をぶち撒けても叱られない世界って一体どんななんだろう。
9. 匿名処理班
なあ俺も特別な才能欲しいよ欲しいよ
10. 匿名処理班
これは凄い
一目見て色彩豊かで惹かれるわ
形も描かれてるのもが生物っぽいのが分かる
11. 匿名処理班
金出す奴が一番すごい
12. 匿名処理班
なにが天才なのか、これっぽっちも分からないのは自分に画才がないからだろうか?
13. 匿名処理班
落書きではないけど、芸術作品っぽく描いてるだけの気も。
ピアノやギターの天才少年、とかだったら素直に頷けるんだけどね。
彼女はこの抽象表現で、何を表現したいんでしょう?
その幼さを考えれば、深みのある作品ではあり得ないだろうし。
14. 匿名処理班
こういう絵は本当に描けませんね。固定概念、ノイズが多すぎて。
一番の理由が「どうせ理解されない」という、描く側の心理的要因によって
描かない、描けないんだと自分は考えます。
だから描ける人は本当に凄いと思う。
15. 匿名処理班
めちゃめちゃ良いじゃん!ぜひ一枚買って家に飾りたいわ
しかし描きたい衝動、って本当ドンピシャ。絵を描かない人からすればそれって異常なことなんだなって中学生ごろ気づいたけど
16.
17. 匿名処理班
すばらしき、「言ったもん勝ち」「コネのあるもん勝ち」の世界
としかコメントのしようがない
18. 匿名処理班
100パーセントこの子が描いてるんだろうか?
最後に誰かがてを加えてるんじゃ?って考える自分は嫌な大人。
19. 匿名処理班
間違い無く魅力的な絵画だ。
20. 匿名処理班
世界中の多くの人が、子供は「育てるもの」だと思い込みすぎ。
21. 匿名処理班
現代美術好きじゃない俺でも、一番下の絵はイイなと感じる。
22. 匿名処理班
どこがどうとは凡人の俺には分からんが、この絵がセンスある事だけはなんか分かる。
不思議なもんだな
23. 匿名処理班
ピカソやブラック等が美術界に残した最大の汚点がこれだよ。
ピカソ自身は確かに天才だったが、彼等の登場以降「現代芸術」の
名のゴミを美術界が芸術作品として認知せざるを得なくなってしまった。
ピカソ等以前、とりわけルネサンスの天才達の影響を受けてきた画家達がもし
これらの作品を見たら、怒るか泣くか・・・まぁ、見てる側としては泣ける時代なのは確かだわ。
24. 匿名処理班
抽象画って才能必要だからなぁ
そんでもってこの子は間違いなく天才の部類
25. 匿名処理班
※23
手塚治虫とか例外は居るけど
上手い人って大げさにほかの人を貶さないんだよ
自分が好きな絵が描ければそれでいいから
ほかの人がどんな作品で評価されようがされまいが、あまり気にならないみたいだ
まあピカソがどんな性格かなんて分からないから勿論断言はできないけれど
26. 匿名処理班
価値観なんで時代と共に変わっていくものだから、
写実主義や具象を描いた物が一番いいとは思わないが、
よくわからない現代美術の作品が何億円とかで取引されたとかってのを見るたびに
「価値とは一体なんだろう?」という疑問を感じざるをえないな。
まぁ宗教に利用されていたという側面があるにせよ、
神々のような人々の理想や幻想を描いた大昔の作品と比べて、
芸術は随分俗っぽい存在になったなとは思う。
27. 匿名処理班
「裸の王様の群衆役選手権」開催中と聞いて
飛んできました
28. 匿名処理班
こういうの買う人は広いリビングの壁を埋められて、知り合いを呼んだ時に幾らで買ったとか何歳の子が描いたとか言って関心を集められれば満足なんだよ
芸術的な価値?美しさ?あるかそんなもん
29. 匿名処理班
こういう「神童画家」の話題を時折見かけるわりに、その後日談
(イラストレーターや画家として第一線で活躍している、とか)
をとんと聞かなくなるのって、ほんと残酷だと思うわ
本人の成長につれ、周囲が「話題性に乏しいただの人」としか見なさなくなるのだから
30. 匿名処理班
※13
音楽で言えばメロディじゃないかな
和声はあとからでもついてくるよ
良いメロディを作れる人を俺は凄いと思う
31. 匿名処理班
いやーそりゃ持ち上げるのはわかるけど
あんまり過度の期待を持ちすぎるのは当人の為にもよくないような気がするぞ
この手の子供の頃の天才は何度もネタになってるけど
大人で物になったのはほんの一握りやで
過去に名前の挙がった天才のその後を特集して欲しいもんだわ
32. 匿名処理班
>>21
デュシャン以降なんだよなそれは
抽象画は固定概念を捨ててみると美しいよ
33. 匿名処理班
パッと目を引くし、延々眺めていたい気分になるねえ。
ただ、さあこの絵の価値を理屈で説明しろ・・・と言われたら困るなw
34. 匿名処理班
個人的に色合いが素敵だなと思うのが幾つかある。悪くないと思うよ。
ただ、バイオリンに絵の具をぶちまけるのはちょっとどうかと思うなあ……。
35. 匿名処理班
教会や権力が権威を誇示するために利用されていた時代のほうが
まだわかりやすかったな。芸術が個人の手に渡りこねくりまわされるようになってから
カオスが始まった。サークル内では価値があるのだろう。日本でも似たような現象が
イラスト界隈じゃあるしそんなにおかしいことじゃないと思う。
36. 匿名処理班
微妙すぎるな
少なくとも芸術ではない
37. 匿名処理班
才能が有れば努力はオマケで付いて来る
とも言えるのかもね
38. 匿名処理班
件のン十億のラクガキはどう見てもラクガキだが
これは違う気がする。
素人がバイアス無しに見て「素晴らしい」と思う抽象画は
本物の証だと思う。
39.
40.
41. 匿名処理班
好きなように絵具ぶちまけてるだけだろ
こんな絵書けない?
まったくおなじのは書けないのは当たり前だけど
似たようなのなら誰でも書けるだろうがW
42.
43. 匿名処理班521
弦楽器って、クジラのひげをつかうでしょ?
見る限り、出す音がまるで、クジラと会話してるようにみえる。
音は波動で、色に見える。
この人は覚醒してるのかも知れない。
44.
45. 匿名処理班
こりゃただの子供の落書きだとは言えないな
46. 匿名処理班
美術史に名を残した抽象画家は基礎やってるし写実も当然うまい。この子はそちらの能力は果たしてどうなんだろうか
得に日本の場合だと、大人は子供が描く絵に関しては写実的で静かな絵よりも「子供らしい」絵を好むから、子供がこういう絵を描くとこぞってもてはやす。小学生対象の県の○○賞とかそういう絵ばかり。でもその時賞取ってた子が後も絵を続けてることはほとんどない。だってそのまま大人になったらただのヘタな人だから
47.
48. 匿名処理班
芸術はわからないけどこの子の絵は綺麗だって思うなあ
大人になってその才能が消えて言ってしまうかもしれないと思うと
その刹那的な価値もあるのかな
49. 匿名処理班
※43
誠に残念ですが、弦楽器に使われるのは鉄、樹脂、伝統的には羊の小腸(ガット弦)でございます
ついでに言えばヴァイオリンの弓に使われてるのは馬の尻尾の毛でございます
どうやら君の想像力の翼は作者を軽く上回ってしまったようだ
50. 匿名処理班
これが何十年も美術愛好家の間で珍重され、取引される作品だとはどーしても思えない。
「本」と「ベストセラー」は違うというのが出版業界ではあるが、
これもそんなに賞味期限は長くないだろ。
結局は作者の人間性や思想までもが投影されたものでなければ、
時間の風雪には耐えられない。
この少女に人間的に魅力があればまた別だが、
例えばヘンリー・ダーガーみたいに、
51.
52. 匿名処理班
「写真でいいだろ?」ってツッコまれたりするけど、
鉛筆とかで超リアルに描いた絵の方が好き。
こういうのより。
53. 匿名処理班
落書きが偶然それっぽく見えて、天才児だって担ぎ上げれば莫大な金を儲けられると思った大人の醜い欲望が勝手に騒いでるだけだろうと思ったんですけど、ちゃんと作品として成立してますね…10年後、20年後にどんな絵を描くのか楽しみです。