障害ある学生:支援拡大、資料点訳や映像字幕…協議会設立
毎日新聞 2014年11月12日 13時12分
心身に障害を持つ大学生らが、授業や試験で不利にならないようにと、大学関係者らが一般社団法人「全国高等教育障害学生支援協議会」を組織し、15日に東京大で設立大会を開く。2016年4月施行の障害者差別解消法で、行政機関や企業などには、バリアフリー化などの必要なサポートをする「合理的配慮」が求められており、大学も対象。参加42校は連携して支援充実を図る。
42校は東大、京都大、北海道大、立命館大、関西学院大など。合理的配慮に関しては公的機関である国公立大は法的義務、民間の私大は努力義務となる。法施行を見据え、この数年で「障害学生支援室」を設置する国立大や私大も増えている。
既に試行中の支援は、授業中に聴覚障害のある学生の横で、学生のボランティアがノートに書き起こす▽視覚障害のある学生のために資料を点訳▽ビデオ教材に字幕を入れる−−など。ただ「何をどこまでやればよいか分からない」と悩む学校もあるという。文部科学省は「合理的配慮」の定義や例を示しているが、具体的でなく、協議会は知識や体験を集め、適切な配慮のあり方を検討する。
日本学生支援機構の調べでは、昨年度に大学、短大、高等専門学校に在籍した障害のある学生は1万3449人で全学生の0.42%。08年度(6235人)の2倍に上る。
設立大会では、42校以外の参加も受け付け、法的義務に関する説明や、合理的配慮に関する意見交換を行う。
同協議会理事の近藤武夫・東京大先端科学技術研究センター准教授は「障害のある学生への配慮は国際的には当然のこと。協議会を通し、大学自らが支援のあり方を発信することに意味がある」と話している。【田村佳子】
◇障害者への合理的配慮◇
障害者が他の人と平等に、受けたい教育を受け、働くことができるよう、必要で適当な変更や調整を行うこと。例えば段差のある場所にスロープを設置する▽教材テキストを点字や音声に変える−−など。過重な負担ではないのに配慮しない場合、差別とみなされる。今年1月に日本が批准した「国連障害者権利条約」に定められている。条約批准に向けて昨年成立した障害者差別解消法は行政機関に合理的配慮の提供を義務付けている。