朝日新聞社の第三者機関「報道と人権委員会」は12日、東京電力福島第1原発事故の「吉田調書」をめぐる報道について、「内容に重大な誤りがあり、公正な報道姿勢に欠けた」とする見解をまとめた。
同委員会は「秘密保護を優先するあまり、調書を読み込んだのが2人の取材記者にとどまっていた」とし、紙面編集の責任者らが調書の関連部分を読んでいなかったことを誤報の原因として指摘した。
掲載日前日まで「(命令)違反と言っていいのか」「命令ではなく指示ではないのか」など、社内で様々な意見が上がったことにも言及。「問題提起はほとんど取り上げられなかった」とし、修正に生かされなかったことも明らかにした。
朝日新聞は当時非公開だった吉田昌郎元所長(故人)の「聴取結果書」(吉田調書)を独自に入手し、5月20日付朝刊一面で「所長命令に違反 原発撤退」の見出しとともに報じた。その後、元所長が命令違反と認識していなかったなどとして9月11日、記事を取り消した。
吉田昌郎、朝日新聞社、東京電力