ダーツ:へぼのプレーは見るな…上級者、どんどん下手に
毎日新聞 2014年11月12日 12時15分(最終更新 11月12日 12時47分)
ダーツの上級者が下手な人のプレーを見て結果を予測しているうちに自分も下手になるとの実験結果を、独立行政法人・情報通信研究機構が11日、オンライン科学誌サイエンティフィック・リポーツで発表した。他者の動作を予測する時と、自分が動作する時の脳内の情報処理に共通する部分があるため、と結論づけている。
◇命中予測で悪影響、実証
同機構脳情報通信融合研究センター(大阪府吹田市)の池上剛研究員らは、ダーツの上級者16人に下手な人が投げる瞬間の映像を見せ、的の11区分のうちどこに命中するか予測して答え合わせをする実験を、120回繰り返した。的から外れた場合の映像は使っていない。
全員が徐々に予測精度を上げ、最終的に平均正答率は当初の2倍以上の約2割になった。比較のため、別のグループを対象に予測のみで答え合わせをしない実験もした。この場合、予測精度は上がらなかった。
実験後にダーツをしてもらうと、予測精度が上がったグループは、実験前の成績と比べて中心からのずれが平均約1センチ大きくなり、技量が低下していた。予測精度が変わらなかったグループに変化はほとんどなかったという。
脳がどのように他者の動作を理解し、結果を予測するかについてはほとんど解明されていない。今回の実験で、他者の動作の結果を予測する能力が学習によって変化すると、無関係に見える自分自身の動作にも影響が及ぶと分かった。人間の運動能力が、他者の動作から影響を受けていることが示された。
池上研究員は「『下手な選手の動きは見ない方がいい』と言う一流選手がいるが、その理由が科学的に実証された。この仕組みを逆に利用し、運動を改善させるようなリハビリテーションや運動トレーニングの方法開発を目指す」と話している。【根本毅】