イスラム国:エジプト過激派も「忠誠」

毎日新聞 2014年11月12日 11時56分(最終更新 11月12日 11時57分)

 【カイロ秋山信一】エジプト東部シナイ半島を拠点にするイスラム過激派組織「アンサール・バイト・マクディス(エルサレムの支持者)」を名乗る勢力が、イラクやシリアで活動する過激派組織「イスラム国」のバグダディ指導者に忠誠を誓う声明を発表した。シナイ半島は、イスラム過激派が共通して敵視するイスラエルと、物流の要衝スエズ運河の間に位置する。イスラム国との連携で過激派が活発化すれば、地域の不安定要因となる恐れがあり、シシ政権も対応に躍起だ。

 声明は約10分間の音声記録で、アンサール・バイト・マクディスの「情報部門要員」を名乗る男が今月10日、ツイッターを通じて公表した。バグダディ指導者を「カリフ(イスラム共同体の指導者)」と認めて服従を誓った。さらにシシ政権を「不正な政府」と非難し、国民に対して共に戦うよう求めた。

 声明の真偽は不明だが、使用されたアカウントでは組織の犯行声明も発表されたことがある。イスラム国は9月にシナイ半島で軍や警察への攻撃を強めるよう呼びかけた経緯があり、声明はこれに呼応した格好。イスラム国が忠誠の見返りに資金を提供する可能性がある。

 アンサール・バイト・マクディスは、昨年7月のクーデターでイスラム組織ムスリム同胞団主体の政権が倒れた後、クーデターを主導した軍や警察を標的にしたテロを活発化させた。治安当局によると、組織は2000人規模。首都カイロでもテロ事件を起こし、「イスラエルのスパイ」として拘束した住民の首を切った動画を公開するなど、イスラム国に感化されたような行動も見せていた。

 軍はクーデター以降、シナイ半島で過激派の掃討作戦を強化しているが、10月には軍の検問所が襲撃され、兵士31人が殺害されるなど過激派は攻撃を継続している。軍は襲撃事件後、隣接するパレスチナ自治区ガザ地区から武器や戦闘員が地下トンネルを通じて流入するのを防ぐため、境界に長さ約14キロ、幅500メートルの緩衝地帯を設ける方針を決定した。

 ただ事実上の強制退去を迫られた1150世帯以上の住民に対する補償は、当面3カ月間は1世帯当たり月300エジプトポンド(約4800円)にとどまり、地元住民からは不満の声も上がっている。

 政府は当初「補償は当面の住宅賃料に相当する」と説明していたが、その後、シシ大統領は「補償を充実させる」と約束した。

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