記事

東京の清掃員は沖縄の営業マンより年収が高い? - 検証:年収は「住むところ」で決まる【1】

1/2

エンリコ・モレッティ著『年収は「住むところ」で決まる』(プレジデント社)という本が話題になっています。年収といえば、学歴や職業による差が問題にされることが多いのですが、この本は居住地の差に着目しているわけです。曰く、「イノベーション都市の高卒者は、旧来型製造業都市の大卒者より稼いでいる」。

なるほど。私のような地方出身者からすると、分かるような気がします。郷里の鹿児島の大卒者よりも、東京の高卒者のほうが稼いでいるんじゃないか。こういう思いを抱くことがしばしばあります。各人が手にする富量は、性、年齢、学歴、職業といった個人の属性と同時に、居住地によっても大きく影響されているといえるでしょう。

私は、上記の本でいわれていることが、わが国でも当てはまるかを追試してみたくなりました。あいにく、学歴別の年収を地域別に計算することはできませんが、職業別のそれは出すことができます。男性正社員の職業別の平均年収を、都道府県別に明らかにしました。その結果を見ていただきましょう。


表を拡大
表1 男性ホワイトカラーの年収分布(東京)

資料は、2012年の総務省『就業構造基本調査』です。男性正規職員の職業別の年収分布を、都道府県別に知ることができます。私はこの分布表をもとに、平均年収を計算しました。東京のホワイトカラー職を例に、計算のプロセスを説明します。ホワイトカラー職とは、管理職、専門・技術職、および事務職を合算したカテゴリーです。

年収が判明する、都内の男性ホワイトカラー正社員は約120万人ですが、その年収分布は上表のようです。最も多いのは年収400万円台ですが、1000万超の高給取りも結構います(16.6%)。さすが東京。

この表から平均年収を計算するわけですが、度数分布表から平均を出すやり方はご存じでしょうか。階級値の概念を使うのですよね。年収400万円台の階級は、一律中間の450万円とみなします。500万円台は550万円、600万円台は650万円、というように仮定するのです。上限のない1500万超の階級は、ひとまず2000万円としましょう。

この場合、年収の平均値(averagae)は以下のようにして求められます。全体を100.0とした相対度数(構成比)を使ったほうが計算が楽です。

{(2200×0.2)+(2000×0.2)+……(35100×2.9)}/100.0 ≒ 702.6万円

東京の男性ホワイトカラー正社員の平均年収は、およそ700万円なり。まあ、こんなものでしょう。鹿児島は529万円、沖縄は474万円。うへえ、同じ男性で、同じホワイトカラー正社員でも全然違いますね。

あわせて読みたい

「雇用・労働」の記事一覧へ

トピックス

記事ランキング

  1. 1

    "洗えるスーツは着るな"にネットで批判殺到

    キャリコネニュース

  2. 2

    消費者庁が過去12年分の問題企業リスト公開

    弁護士 紀藤正樹 Masaki kito

  3. 3

    アベノミクスと黒田砲で相次ぐ「円安倒産」

    木村正人

  4. 4

    "100社落ちる"というリアリティを考える

    Chikirin

  5. 5

    ハロウィンの異常な盛り上がりは誰のせい?

    新井克弥

  6. 6

    極めてアンフェアな1.5倍の官民給与格差

    木走正水(きばしりまさみず)

  7. 7

    年商600万円くらいを超えて感じた"豊かさ"

    Hayato Ikeda

  8. 8

    銀座バイトで内定取消しは男性社会の表れか

    quipped

  9. 9

    国の借金1143兆円へ、高齢者はお荷物扱いに

    町村泰貴

  10. 10

    1日6億も北海道民のお金が海外流出している

    mediagong

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

意見を書き込むには FacebookID、TwitterID、mixiID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDまたはYahoo!IDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。