G20首脳会議では世界景気減速に焦点、日欧は批判回避か
[シドニー 10日 ロイター] - 15─16日に豪ブリスベーンで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合では、世界景気の先行き懸念が焦点となる見通しで、日欧が最近実施した追加金融緩和策が円安やユーロ安を引き起こしたことに関し、通貨切り下げ競争を再燃させたとの批判につながる公算は小さい。
G20は、世界経済の成長率を2018年までに2%ポイント底上げすることを目標に掲げているが、これまでのところほとんど進展はしていない。
AMPキャピタルの投資戦略部門責任者兼チーフエコノミスト、シェーン・オリバー氏は、「数年前は、G20諸国は互いを公の場で批判することが多かったが、当時に比べると現在は冷静な対応がとられているようだ」と指摘。
日銀は先月末にマネタリーベースを年間で約80兆円増加するペースで資産買い入れを行う追加緩和を決定した。これまでに比べて10─20兆円の追加となる。これを受けて円は先週、対ドルで7年ぶりの安値となる115.52円まで下落している。
また、欧州中央銀行(ECB)の高官は先月、最近の緩和措置をもってECBは政策の「新たな段階」に入ったと指摘。ドルは対ユーロで先週、4年半ぶりの高値をつけた。
米国は4年前のG20で、連邦準備理事会(FRB)による量的緩和(QE)がドル安を招いているとして批判を浴びたが、それに対する報復として今回、日欧を非難するとは見込まれていない。
世界景気が鈍化の兆しを示す中、米国は雇用の拡大や景気のプラス成長を果たしており、他国に対して寛大な姿勢を取ることが可能な状況にある。
豪ニューサウスウェールズ大学のジェームズ・モーリー教授(経済学)は、「今回の日本のQEはタイミングが良かった」と指摘。「米国はこのところの良好な経済動向を背景にドル高を容認することが可能で、米国が日本のQEを批判しないのならば、G20の残りのメンバーも同様の姿勢を取るだろう」と述べた。
フランスのサパン財務相は最近の円安やG20で円安が議論される可能性について懸念を示すことはなく、ロイターに対し、「ユーロが引き続き弱くなっており、われわれにとっては良いニュースだ」と述べた。
ただ、韓国は自国の輸出競争力に影響を及ぼす円安を静観するつもりはないと警告している。韓国銀行(中央銀行)の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁は前週末、円安について、韓国の対応力には限界があるものの「座視するつもりはない」と述べた。
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