2014年10月末、東京電力は福島第一原発1号機での使用済み燃料プールからの燃料取り出し開始時期を2年、溶け落ちた溶融燃料の取り出しを5年、それぞれ遅らせると発表した。高線量の中、作業は困難を極めるだろうとの指摘が当初からあったが、その通りになった。これからの廃炉の問題点について、京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)
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ラジオフォーラム(以下R):以前(2014年4月)、NHKが廃炉に関するドキュメンタリー番組を放送しました。事故から3年以上経って、ようやく廃炉の難しさについてのドキュメンタリーを流した訳ですが、そこで訴えていたのは「作業員が確保できない」ということでした。こんなことはずっと以前から指摘されていたことで、今更という気がしますが。
小出:もちろんです。 チェルノブイリ原子力発電所の事故の場合には、60万人から80万人もの軍人、退役軍人、労働者、一部には囚人もいたと言われていますが、それだけの人たちが動員されて、なんとか事故を収束させようとしたのです。
チェルノブイリの時には、壊れたのはたった一つの原子炉でしたけれども、福島では4つが同時に壊れて事故が今も進行しているわけです。当然、多くの労働者、とりわけ熟練した労働者がたくさん必要になる訳ですけれども、そういう熟練した労働者の数というのはもともと知れています。そういう人たちがどんどん被曝の限度に達してしまって、現場で働けなくなってしまうという状況に次々と追い込まれているのです。
日本の法律だと5年間に100ミリシーベルトという限度があって、通常は一年間に20ミリシーベルトで規制しているのです。ところが、もう次々と20ミリシーベルトを超える労働者、熟練工が出てしまって、その人たちが現場ではもう働けない状態になっているのです。なかには一年間のうちに100ミリシーベルトを浴びてしまうような人もおり、そうなると今度は5年間、現場には戻れませんので、彼らはもうほとんど作業ができなくなるわけです。
◆労働者への手当てを保障する体制もない
R:原発作業の将来を考えた時、さらに問題なのは、こういう一生懸命やってくれている作業員たちに対する手当が非常に低くて、彼らが原発での作業をやめたり、除染の作業などに移っていってしまっているとも言われていることです。
小出:危険手当を東電が払っているのですけれども、下請け、孫請けというような重層的な下請け構造があって、8次、9次、10次下請けというようなところもあるということです。つまり、ピンハネされてしまって労働者には回らないという状態になってしまっているわけです。
R:チェルノブイリのあるウクライナは国を挙げて収束にあたっており、1日2千人の作業員がいるということですが、手当を普通の給料の1.5倍にしたので3倍の応募者があるそうです。チェルノブイリと比べて 日本は全然そうした体制が整っていないのですね。
小出:全く整っていないです。ですから、東京電力ももう統率能力を失ってしまっていますし、 作業を丸投げしていくわけです。請け負った方も次々と丸投げしていって、下請けがどんどん広がっています。このままの状態では、本当にきちんとした労働者への手当ができなくなると思います。
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