「お前の顔を見てると吐きそう」「死んだほうがいい」。職場の上司からこんな発言を受けたら、どう感じるだろうか。うまく受け流せずに、傷つくひとも多いだろう。あるいは「パワーハラスメント(職場の権力を利用した嫌がらせ)を受けた」と憤るかもしれない。
その発言が「パワハラ」にあたるかどうかは、どう見極めればいいのだろうか。働く人の法律問題にくわしい河野祥多弁護士が11月7日、オンライン授業サイト「schoo(スクー)」の生放送番組で解説した。
●状況や関係性を含めて判断される
河野弁護士によると、上司が部下に「お前の顔を見てると吐きそう」「死んだほうがいい」と言った場合は、「パワハラに該当する」という。どのような基準があるのか。
「どこまで許されるのか、どこから許されないのか。実は、そのあたりが明確に決まっているわけではありません。
会社という組織には上下関係がある以上、上司から部下に対して指示や指導、もしくは失敗した際などに叱責することは想定されています。
なので、どういう状況で言われたのか。言われた人と言った人の関係性がどういうものだったかも含めて判断されることになります。単なる発言内容だけでは、なかなか判断ができません」
●「体型」に関する発言は「パワハラ」に該当しやすい
番組中に視聴者の質問や体験エピソードを受け付けたところ、「体型のことをいじられたことがある」というコメントが寄せられた。たしかに、体型や容姿に対する発言は、傷つく人も多い。たとえば、太っている部下や同僚に対して、「お前、最近太ったな」と言うのはパワハラにあたるのだろうか。
「周りに人がいたか、いなかったかなど状況にもよるので、一概に言いにくいのですが、一般的に体型に関しては、パワハラに該当しやすくなります。
なぜなら、その人の仕事内容に直接的に関係がないからです。また、体型や容姿は、その人の意思で簡単に変えられるものではありません。そういった意味で、より慎重に発言しないといけない事柄でしょう」
世の中には、太っていることを気にせず、自らコミュニケーションのネタにする人もいる。そういう場合は問題ないのだろうか。
「その人自身が、ネタにするのは問題ないと思います。
しかし、太っていることをネタにすると、別の太っている人が傷ついてしまう事態もありえます。自分がかまわないからと言って、必ずしもネタにしてもいいわけではありません」
河野弁護士はこのように説明していた。パワハラは、その人の尊厳や人格を大きく傷つける。職場の雰囲気を悪化させてしまうことにもつながる。職場での発言には気をつけたいところだ。
弁護士ドットコムは、今後も月に1回のペースで、わかりやすい法律解説などをテーマに、schooのネット生放送番組を配信する予定。
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