米アップルの最高経営責任者(CEO)、ティム・クック氏(54)が10月末、自らが同性愛者であることを公表した。有力企業のトップが同性愛者であることを認めることは経営を混乱に陥れるリスクもはらむ。過去には英エネルギー大手BPのトップが同性愛発覚を機に辞任に追い込まれたケースもあり、経営への影響は見通せないとの声も出ている。同性婚の合法化が急速に進む米国でも、同性愛者への偏見や差別は根深い。クック氏がそれでもカミングアウトに踏み切った理由には、アップルのトップとなった自分が表舞台に立つことで他の同性愛者が力づけられるとの判断があり、クック氏が投じた一石が同性愛者の権利拡大につながることに期待がもたれている。
クック氏は10月30日、米誌ブルームバーグ・ビジネスウイーク(電子版)に寄稿した手記で、「私は同性愛者であることを誇りにしているし、神から与えられた最高の贈り物だと思っている」と告白した。
米メディアは時価総額の高さなどから世界で最も評価される企業と位置づけられるアップルのCEOのカミングアウトを大きく取り上げ、称賛を送った。しかし一方ではカミングアウトが経営に影響を与えるリスクも指摘されている。
思い出されるのは1995〜2007年にかけてBPのCEOを務めたジョン・ブラウン氏(66)のケースだ。ブラウン氏は在任中を通じて同性愛者であることを隠してきたが、元パートナーがブラウン氏との関係を新聞社に暴露し、最終的には辞任に追い込まれた。米紙ニューヨーク・タイムズは10月31日付紙面で、インドネシアや中国などアップルが売り上げの27%を稼ぐアジアでは同性愛が処罰の対象になるケースもあることに触れ、「カミングアウトが経営に与える影響は見通せない」とした。ただ、クック氏は経営への波紋も覚悟のうえでカミングアウトに踏み切ったようだ。手記の公表は事前にアップルの取締役会に報告し、アップルのアーサー・レビンソン取締役会議長(64)はクック氏に対する「心からの支援」を表明している。
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