慶応義塾大の湯浅慎介専任講師と福田恵一教授らの研究グループは、患者から作ったiPS細胞を使い、心臓の筋肉が分厚くなる難病「肥大型心筋症」の治療薬候補を見つけた。既に肺の病気に使われている経口薬で、心臓病への適用拡大が期待される。今後は製薬企業と協力し、病気の進行を遅らせたり心臓の機能を回復させたりする効果があるかを検証する。
成果は12日、米国心臓協会誌に発表する。
肥大型心筋症は心臓の筋肉が厚みを増して硬くなり、血液を押し出す機能が衰える病気。原因となる遺伝子変異は1千種類以上あり、同じ変異でも重症度に差がある。
研究チームは40~70代の患者3人から作ったiPS細胞を使い重症化の要因を調べた。
iPS細胞から心筋細胞を作り、血管を収縮するホルモン「エンドセリン1」を加えたところ、筋肉の線維に異常が起きた。エンドリセン1の働きを抑える肺病の薬を与えると、異常が戻った。福田教授は「軽症の患者であれば、薬で心機能が回復するかもしれない」と話している。
肥大型心筋症の患者数は推計2万人以上。家族に遺伝することがわかっているが、原因不明の場合も多い。
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