近年、コーヒーへの関心が高まっている。ここ数年で「がんの発生を抑制する」「脳梗塞・脳出血の発症が少ない」「運動前のコーヒー摂取が脂肪燃焼を助ける」といった、コーヒーの健康効果が数多く報告されるようになった。そんな中、昨年、コンビニコーヒーが一気に始まり、コーヒー消費を底上げしている。コーヒーの国内需要は堅調に伸びる一方で、今年は世界的なコーヒーの不作の影響で、コーヒーの価格上昇が著しく、店頭の価格も値上がり傾向にある。
今回は、全日本コーヒー協会の西野豊秀専務理事に、コーヒーの健康効果や適切な飲む量、そして今後の価格動向について話を聞いた。(聞き手は小野口哲)
以前は「コーヒーは体に悪い」と言われていた
まず、全日本コーヒー協会について教えていただけますか。
全日本コーヒー協会 専務理事。昭和43年農林省入省。平成19年6月に食品リサイクル法の改正を終え、7月に退職。農林水産省を退職後、平成19年10月から現職。平成24年6月からは全日本コーヒー公正取引協議会常務理事も務める。
西野:全日本コーヒー協会は、社団法人として1980年に設立されました。国際コーヒー機関という組織があるのですが、そこが日本でコーヒーの消費振興を目的に、日本のコーヒー業界をまとめてほしいという意向があり設立されました。
国際コーヒー機関は当時、商品協定で大きな役割を担っていた団体で、外務省と農林水産省が社団法人化を支援して全日本コーヒー協会ができました。途上国からのコーヒー輸入を促進してもらいたいということでできたわけです。
実は、1980年(昭和55年)ごろは、「コーヒーは体に悪い」という噂がまことしやかに流れていました。
当時私は小学生でしたが、確かに、カラダにいいものじゃないと教わりましたね。大人になったら飲んでもいいもの、と。
西野:私は当時、農林水産省にいました。昭和53年にコーヒーを担当している課で、ある産地のドリップコーヒーを飲んだのですが、ものすごくおいしかった。これはうまい!と。
それまでもインスタントコーヒーを家で飲んでいましたが、まったく違いました。家でもこういうものが飲めるようになると、すばらしいと思いましたね。そこで、さっそくコーヒーミルなどを買いに行ったのですが、帰ってきたら上司から、「君、そんなものを飲んでいると若くして胃がんになって死んでしまうぞ」と言われました(苦笑)。それくらい、コーヒーは危ないものという評価だったんですね。
1980年に全日本コーヒー協会ができた後も、世間では「コーヒーはやはり体に悪い」と言われていました。