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福井<老いの原発の行方>(1) 迫る判断
古い原発をどうするか。原発再稼働の動きが進む中で、電力会社は難問に直面している。国内の原発四十八基中、“老いの世代”は七基。うち五基は県内にある。廃炉か運転延長か道は二つ。どちらを選んでも課題は多く、重大な経営判断を迫られている。 「考え方を早期に示してほしい」 小渕優子前経済産業相は十月十七日、電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)と会い、判断を急ぐよう迫った。 運転開始から四十年前後となる全国の老朽原発七基を廃炉にするか、運転延長にするか。はっきりと判断時期を示さないでいる電力会社に、早く決めるよう求める国の通告だった。 二日前には原子力規制委員会が、老朽原発を運転延長するなら、新しい規制基準での適合審査の申請を早くするよう電力各社に指示している。対象になる七基中四基を抱える関電に残された時間は少ない。 “最古参”の七基を運転延長するには、来年七月までに規制委に申請し、二〇一六年七月までに手続きを終える必要がある。新規制基準の審査には時間がかかり、各社の判断のリミットは「年内」との見方が強い。 関電の四基のうち、美浜1、2号機(美浜町)については「廃炉にする可能性が高い」と多くの関係者はみている。 最大の理由は経済性だ。旧型のため、新基準が求める燃えにくいケーブルを使っていないなど安全対策工事に膨大な費用がかかる。なのに出力は二基合わせても八十四万キロワットで、大飯原発(おおい町)一基分にも満たない。延命に大金を使っても見合う利益は少ないという現実がある。 一六年の電力全面自由化で経営環境の厳しさは増す。八木社長は会見で、廃炉のポイントは「競争力のある電源として活用できるかどうか」と話した。原発は「選別の時代」に入り、“お荷物”は切り捨てる方針をほのめかす。 政治的な事情もある。今春、閣議決定したエネルギー基本計画で「原発依存度は可能な限り低減させる」と明示。廃炉はその証しになり、約六割が原発再稼働に反対する世論をかわす意図があるとみられる。 廃炉を促すため、国は電力各社に配慮する。廃炉にすると原発の資産価値がなくなる。巨額の損失が生じることによる財務悪化を防ぐ制度改正の方針も示している。 ただ、問題は経済性だけでは済まない。関電が頭を悩ますのは、立地自治体との関係悪化だ。「廃炉を検討するなら、使用済み核燃料の中間貯蔵、放射性廃棄物の埋設、地域経済への影響とセットで議論しないと話にならない」。九月、県庁を訪れた関電の岩根茂樹副社長に杉本達治副知事は、不快感をあらわにした。 県は一九九四年から中間貯蔵施設の必要性を訴えている。関電と日本原子力発電は、二〇一〇年までに県外で施設の操業を始めると約束したが、期限を四年過ぎた今も見通しは立っていない。県幹部は「立地地域への甘えだ。真剣味が足りない」と憤る。 廃炉になれば、立地自治体を潤してきた電源三法交付金や核燃料税がなくなる。雇用や関連産業など地域経済への打撃も大きい。 国、地域、電力会社の事情が複雑に絡み合う中で、判断の時期が近づく。 (西尾述志) PR情報 おすすめサイトads by adingo
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