少子化で子どもの数が減っても、家庭の教育費は高止まりする中、「家庭教師離れ」が進んでいる。手狭なマンション住まいなどで他人が家庭に入ることへの抵抗感や、大学生らのなり手不足が背景にある。代わりに伸びているのが塾の「個別指導」だ。一方で、国民生活センターには、授業料のトラブルなど塾や家庭教師をめぐる相談が年間約3千件、寄せられている。

 矢野経済研究所の推計では、昨年度の家庭教師派遣市場は1040億円と、統計がある2005年度から14%縮小。同時期に塾・予備校市場が9千億円台で推移しているのとは対照的だ。

 「ふくろう博士」のCMで知られる家庭教師派遣業界の草分け、日本家庭教師センター学院(東京都)の古川隆弘学院長(45)は「不景気もあるが、赤の他人が家庭内に入ることが難しくなっている」と明かす。

 同社は家庭教師や専門の教育相談員が、友達付き合いや親子関係の相談にも乗り、勉強を教える日以外にもメールや電話でフォローする。ただ最近は、そうした面倒見のよさを敬遠する家庭も少なくないという。

 教える側の家庭教師離れもある。古川さんは業界の傾向として「若い世代が家庭とのコミュニケーションを嫌がり家庭教師の仕事に魅力を感じなくなってきていて、家庭教師が集まりにくい」という。

 大学生約50万人が登録するアルバイト募集サイト「大学生アルバイト.com」の担当者は「ここ数年、求人数全体が増える中で家庭教師希望の学生は減っている。イベント設営など、その場限りの日払い仕事が人気だ」。

 一方で拡大しているのが教師1人で生徒1~3人程度を教える「個別指導」だ。同研究所によると、今や塾・予備校市場の4割強を占める。

 個別指導大手の明光ネットワークジャパン(同)は1984年から「明光義塾」を全国に2137教室展開。今年8月時点の生徒数は13万5千人と、この10年で4万5千人増えた。同社経営企画部の担当者は「家庭教師を敬遠する需要を取り込んでいるのかもしれない」。