11月末日まで皇居にて実施されている「昭和天皇実録」特別閲覧に行ってきました。「昭和天皇実録」とは、様々な資料を元に昭和天皇の88年間を60巻の書物にまとめたものです。大抵は一巻に付き一年が割り当てられています。
1巻あたりの文字数は約162000字(45文字×18行×200ページ)。一般的な新書やラノベの文字数が10万字ですから、昭和天皇の一年間の記録はラノベ1.6冊に及ぶ分量となるわけです。そんなに文字数あんのか、と思いながら読んでみました。
ベールに包まれた昭和天皇の私生活が明らかに
「公爵九条道孝、子息良叙を伴い参殿につき、謁を賜う」(公爵の九条さんが息子と一緒に会いに来た)
大抵はこんな感じで、誰かに会った、どこかに行った、何かをもらった、といった記録が淡々と記されています。
昭25 9月28日「宮内庁次長林敬三より国内における共産党員と朝鮮人の動向についての進講をお聴きになる」
これは昭和天皇49歳の時の出来事。こんな感じで、年が長じてからはそれっぽいことが色々書かれているんですが、一方で子供の頃は……
明35 2月1日「左上内切歯が確認される」(歯がはえた)
明35 2月4日「御違例にて体温は三十八度になる」(熱が出た)
明35 4月9日「玩具並びに反物を賜り……」(おもちゃもろうた)
明35 8月5日「掴まり立ちをされる」(立った)
明35 8月24日「御起立の際に初めて一、二歩歩まれる」(歩いた)
明38 3月5日「お八つ御持参にて香貫山麓にお成りになり、ツクシ、タンポポ等をお摘みになる」(ピクニックいった)
明45 4月27日「解剖したカエルに「正一位蛙大明神」の称号を与え埋葬される」(カエル埋めた)
など、読んでてほっこりする記述がぽろぽろ出てきて、事実を淡々と記してるだけの味気ない書物のはずなのに意外と面白い……。そして、一緒に参加した友人たちと後で気付きを話し合うと、色んなエピソードが出てくる出てくる。
「デッキゴルフ好きすぎ。3日に一度はしてる」
「トナカイを一頭貰ってた」
「ドミノ倒ししてる」
「映画めっちゃ見てる。『日本の椎茸』とか『食用カエル』とか」
たぶん、こうやって僕らがキャッキャするために編纂されたんじゃないとは思うんですが……なんだか楽しい……。流石は日本の象徴。一挙一動になんだかワクワクしてしまう……。
閲覧は各回50分の総入れ替え制。当然ですが、たった50分では長大な実録のほんの一部しか読めません。数人で行って、見つけたエピソードを話しあったりすると楽しいのではないでしょうか!
【昭和天皇実録(写し)の特別閲覧】
実施時期:平成26年9月9日(火)から11月30日(日)まで(予定)
実施場所:皇居内書陵部庁舎(地階臨時閲覧室)
関連サイト:昭和天皇実録(写し)の特別閲覧の実施について - 宮内庁
著者プロフィール
作家
架神恭介
広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)