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「中国漁船が近年、日本近海でマグロの乱獲をしていると報じられてきましたが、数年前から赤サンゴの密漁も業界内で大問題だったのです」
こう語るのは、サンゴの「原木」入札が行われる高知県内のサンゴ業者だ。
東京都の小笠原・伊豆諸島周辺に、200隻を超える中国漁船が押し寄せた。戦争映画をほうふつさせる映像に、国民は騒然とした。ただ、日本の領海や排他的経済水域(EEZ)での、中国漁船による赤サンゴ密漁は今回が初めてではない。
昨年11月、中国・福建省の漁船が、海上保安庁に拿捕(だほ)されたことが報じられている。沖縄周辺や長崎・五島列島にも出没していたが、多勢に無勢なうえ、中国漁船は罰金を支払うと密漁を再開させる。生態系を壊しかねない勢いで採りまくる中国漁船を、日本は無力なまま事実上、放置してきたのだ。
「宝石サンゴ」と言われる類の色は、赤、桃、白など約20種類。中でも、中国系の富裕層に人気が高いのが赤サンゴで、天然石である翡翠(ひすい)に匹敵する。
台湾周辺も赤サンゴの生息地だが、日本で密漁したがる理由は「日本産が世界最高品質の赤サンゴ」だからであり、国際的にも「AKA(赤)」の名前で流通している。養殖もできず、成長するのに年数がかかるため、希少価値がある。
その赤サンゴが、中国では“株券化”し、投機対象となり、価格が急騰している。それに目をつけた中国の漁師らが、日本での密漁で一獲千金を狙っているわけだ。