大阪あいりん地区:ゴミ無法地帯 監視強化もいたちごっこ
毎日新聞 2014年11月11日 16時13分(最終更新 11月11日 17時45分)
大阪市西成区のあいりん地区でゴミの不法投棄が後を絶たない。その量は市内の不法投棄の3分の1以上を占める。衛生上の問題にとどまらず、その処理のために年間数億円の税金が使われている。警察や市は監視を強めているが、すり抜けるように捨てられるため、いたちごっこの状態だ。【藤顕一郎】
萩之茶屋南公園(通称三角公園)周辺のあいりん地区は日本最大の日雇い労働者の街。市の調べでは、0.62平方キロメートルに約2万人が住んでいる。
市環境局によると、あいりんで2013年度に市が収集した不法投棄ゴミは1435トン。市内全域(4160トン)の約35%を占めた。市の不法投棄ゴミの処理費用は年間約10億円に上っており、あいりん分だけで毎年、数億円の税金が投入されている計算だ。
あいりんでは、簡易宿泊所、飲食店などの地元業者の一部が不法投棄を繰り返すケースが多いという。ゴミ処理の費用を浮かすためとみられる。
また、家庭の一般ゴミは市が定期的に無料で回収するが、あいりんでは曜日や昼夜を問わず、路上に捨てる人が少なくない。
このため連日のように、あちこちの歩道や道路脇にゴミが積まれたり、散乱したりしている。小中学校の脇も捨て場所になっている。テレビ、冷蔵庫、建築廃材などの粗大ゴミの他、カップ麺や弁当の容器、生ゴミなども捨てられている。
市は不法投棄のゴミを毎日回収しているが、翌朝にはまた大量のゴミがたまっており、辺りに異臭が漂うこともあるという。
不法投棄を減らそうと、市は今年度から、24時間態勢の巡回監視を始めた。地元住民らで作る合同会社が市の委託を受けて街を練り歩いている。大阪府警西成署も取り締まりを強め、今年1〜9月末で49人を逮捕し、昨年1年の19人を上回った。監視員の通報で検挙した例もあるという。
ただ、あいりんの4〜8月末の不法投棄ゴミは約650トンと、昨年同期(約700トン)の微減にとどまる。合同会社の松繁逸夫さん(64)は「監視や取り締まりだけで不法投棄はなくならない。街をきれいにしようと、繰り返し訴えることが必要だ」と指摘する。
◇「捨てているのではなく、リサイクルや」
なぜ不法投棄をするのか。あいりん地区の現場を取材した。