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再増税実施へカギ握るデフレ脱却

2014/11/7付
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 安倍晋三首相は年内に、消費税率を予定通り来年10月に10%に引き上げるかどうかを最終決断する。有識者が消費再増税の是非について意見を表明する点検会合も始まった。消費再増税の意義を改めて確認しておく必要がある。

 日本の国と地方をあわせた借金は国内総生産(GDP)の2倍を超え、先進国で最悪の財政状態にある。

社会保障の財源不可欠

 年金や医療などの給付を受ける高齢者が急増する一方、社会保障の支え手である現役世代の数は減っていく。さらに巨額の借金を放置すれば、将来世代に負担のツケを回してしまう。消費税率を上げなくてはならないのは、社会保障の財源を確保するためだ。

 その一方で、日本経済は15年に及ぶデフレから確実に脱却できるかどうかという重要な節目にあるのも事実だ。財政再建と、デフレ脱却をいかに両立させるのか。10%への消費再増税の是非を点検するときの最大のポイントだ。

 予定通り来年10月に再増税する場合のリスクは、景気をひどく悪化させかねないことだ。

 実際、今年4月に消費税率を5%から8%に引き上げたあと、4~6月期の実質経済成長率は年率7.1%のマイナスとなった。

 逆に再増税を延期する場合のリスクは、金融市場で日本の国債に対する信認が著しく失われ、長期金利が意図しない形で急上昇することだ。

 2つのリスクは性格が異なる。仮に再増税によって景気が大きく下振れしたとしても、財政・金融政策によって悪影響を和らげる余地はある。

 これに対し、再増税の延期で金利が急上昇すれば、政府・日銀の政策では対応が難しくなる。金利上昇で政府が投資家に払う利払い費が膨らみ、借金で首が回らなくなっては元も子もない。

 先行きの景気への目配りは大事だとしても、財政再建をやり抜く決意を忘れてはならないのはこうした理由による。

 景気動向指数をみると景気は今年1月を山として後退局面に入った公算が大きい。だが、9月以降の生産は緩やかに持ち直す兆しがある。株価上昇も追い風だ。

 7~9月期の実質成長率は年率2%前後との予測がエコノミストから出ている。この通りであればマイナス成長からの反発力は鈍いといえるが、1%未満とされる日本経済の潜在成長率を上回る出来ともいえる。

 景気に過度な悲観も楽観も禁物だ。政府がやるべきことは、再増税により日本経済が深刻なデフレに逆戻りする危険の度合いをギリギリまで見極めることだ。

 予定通り再増税をするのであれば、来年度後半に家計の可処分所得の目減りを緩和する景気対策は必要になる。特に増税の影響を大きく受ける低所得者向けの支援は拡充すべきだろう。

 ただ、資材価格が上昇し、人手不足が広がるなか、公共事業の大盤振る舞いをするのは論外だ。

 もしも再増税の時期を延期するのであれば、大きな景気対策は不要だ。さらに社会保障費を中心に思い切った歳出削減をして財政収支を改善するのが筋だ。「増税はしない。歳出も減らさない」という安易な再増税の延期では、安倍政権の財政再建に対する本気度が疑われるだろう。

成長力強化へ改革急げ

 政府はこれまで2015年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を10年度比で半減したうえで、20年度に黒字にする目標を掲げてきた。これを守るのか、別の目標をつくるのか、再増税延期なら明確にすべきだ。

 消費税率を5%から10%に上げる5%分の税収増のうち、1%分は社会保障の充実に回すことが決まっている。再増税延期だと、子育て支援などに十分な財源を用意できなくなる点も留意すべきだ。

 もちろん、経済政策運営には常に柔軟さも欠かせない。万が一、リーマン危機やアジア通貨危機のような「経済有事」が起きるのであれば、再増税を延期するといった心構えはいる。

 このところ法人減税や規制改革といった成長戦略が足踏みしていないか、気がかりだ。安全性を確認できた原子力発電所の再稼働、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の早期妥結、社会保障制度のさらなる効率化は急務だ。

 日本経済を力強く再生させることは、消費再増税をしやすい環境をつくる王道でもある。日銀の追加金融緩和で得られた貴重な時間を政府は無駄にせず、改革を加速すべきだ。

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