立冬過ぎの冷え込みと、小春日和の日差しとが入り交じった北京の空気は、いまの日中関係を象徴しているようだ。

 両国の首脳会談が2年半ぶりに実現した。互いにこわばった表情ではあったが、報道陣の前で固く握手を交わした。

 世界第2と第3の経済大国であり、長く豊かな交流の歴史を培ってきた隣国である。首脳の対話が途絶する異常な期間は、これで終わりにしたい。

 会談はわずか25分間だったとはいえ、関係改善の意思を確認し合った意義は大きい。これを出発点に、確かな信頼関係を築けるかが問われている。

 両首脳が政権に就いてから約2年間の軌跡は、繰り返してはならない愚策の連鎖だった。

 無謀な軍拡を続ける中国は、自衛艦へのレーダー照射や、防空識別圏の一方的な設定など挑発的な行動を続けてきた。安倍首相は、内外の反対を押して靖国神社に参拝したほか、中国を刺激する言動をみせてきた。

 尖閣諸島をめぐりアジアの二大国が戦端を開きかねない。100年前の第1次大戦からの連想も手伝い、世界がそう心配しているのは恥ずべき事態だ。

 日中関係を穏当な発展の流れに好転させることは、両首脳がそれぞれ語ったように「国際社会の普遍的な期待」である。

 その責任の重さをかみしめてもらいたい。遅かったとはいえ、この会談で関係立て直しの入り口には立った。問題は、ここから何をめざすかだ。

 実のところ、一党独裁体制を維持したまま国力を高める中国とのあるべき関係は、日本にも米欧にも描ききれていない。どんな問題であれ、価値観の違いによる摩擦は避けられない。

 だからこそ、互いに共有点を見いだし、プラスになることを地道に積み上げるしかない。日中の合意文書に盛られた「戦略的互恵関係」は、両国が世界に貢献しつつ共通利益を広げることを指していると考えたい。

 安全保障は引き続き優先課題だ。東シナ海域での不測の事態は、何としても防がねばならない。防衛当局間の「海上連絡メカニズム」の運用開始について確認した意味は大きい。

 両国とも経済不安を抱えている。日本の対中投資の落ち込みを政府間協力を通じて回復させる余地はあろう。高い付加価値を生む日本企業の投資は、中国経済の構造転換にも資する。

 首脳会談に先立つ外相会談では、中断している政府間の様々な対話の再開が議題に上った。そこを手はじめに、両国政府の一層の努力を求めたい。