スタジアムを「劇場」に/第4部 未来に向けて(2)元ベガルタ仙台選手 千葉直樹さん
−ベガルタ仙台が創設20周年を迎えました。
「感慨深いですね。弱い時代を知っているので、J1のチームにまでよく成長したと思う。設立当時は仙台にプロスポーツチームがなく、プロサッカーの人気が出る県民性とは思いませんでした。それが1997年の仙台スタジアム(現ユアスタ仙台)のこけら落としの試合での盛り上がりに驚いた。メンバーから外れてスタンドから見ていて、いつかはピッチに立ちたいと純粋に感じました」
<楽天が良い手本>
−地元のチームで15年間プレーしました。
「クラブに拾われて入団できたのは、幸運でした。負けず嫌いで練習に打ち込み、レギュラーまで上り詰められた。初めは憧れだったユアスタ。そのサポーターから声援を受け続け、本当にうれしかった」
−現在は千葉さんのような地元出身選手が少ない。J2長崎に期限付き移籍の奥埜博亮、来季入団が内定している茂木駿佑のほかに仙台のユース出身選手はいません。
「率直に言うと、下部組織の在り方に問題があるのではないでしょうか。Jリーグのチームでこれほどユース出身の選手が出てこないのは珍しい。原因を考えないといけない。毎年1人くらいはトップチームに昇格し、18、19歳で主力を張るようになってほしい」
−ホームでの入場者数が年々減っています。
「東北楽天が良い見本だと思います。歴史はベガルタが長いが、企業力では向こうの方が上回っている。球場内外をエンターテインメントとして演出している。まねをするぐらいで良いのでは」
「子どもたちがスタジアムに行きたいと思えるかが大事。東日本大震災後、選手は一生懸命走って必死にプレーし、見ているサポーターの心を動かしていた。そんな姿勢を突き詰めてほしい」
<憧れの存在理想>
−タレントやフットサル選手などとして活動しています。今後、クラブとの関わりは。
「司会業やモデルなどの仕事をしているが、根本にあるのはサッカー。お世話になったサッカーに還元したいとの思いもあります。クラブに戻りたいと願っているが、まだまだ学ぶべきことがある。いずれは学んだエンターテインメントを通じ、試合の日は一日楽しめる『ユアスタ劇場』をつくる夢がある」
「サッカーとフットサルの共通組織をつくり、選手が行き来できる仕組みにしたい。サッカー強豪国では選手がどちらかを選べる。自分がフットサルをやっているのも双方の垣根を低くする役割を果たしたいから。フットサル単体では集客が難しい。組み合わせることで可能性は広がるはずです」
−20年後のクラブの将来像は。
「東北の子どもが入りたいと憧れる存在であるべきだと、自分は言ってきました。みんながベガルタ仙台に入りたいとなってほしいし、なれる土地柄だと思います」(聞き手は吉江圭介)
[ちば・なおき] 宮城・東北学院高から96年に前身のブランメル仙台に入団。ベガルタ仙台の2度のJ1昇格に貢献し、10年に引退した。仙台市出身。37歳。
2014年11月09日日曜日