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ドニエプル・ロケット、日本の衛星5機の打ち上げに成功
November 9 - 2014 - ドニエプル
Image credit: ISC Kosmotras
ISCコスモトラス社、ロシア戦略ロケット部隊は11月6日、日本の技術実証衛星ASNARO-1など計5機の衛星を搭載したドニエプル・ロケットの打ち上げに成功した。
ロケットは現地時間2014年6月20日13時35分49秒(日本時間2014年11月6日16時35分49秒)、ロシアのオレンブールク州にあるヤースヌィ宇宙基地の地下サイロから圧縮ガスによって打ち出された。そして第1段のロケットエンジンに点火され、飛行を開始した。ロケットはその後も順調に飛行し、5機すべての衛星を軌道に投入した。
米国の宇宙監視用レーダーによる観測によれば、5機の衛星はそれぞれ高度約500kmほど、傾斜角約97.5度の太陽同期軌道に入っていることが確認されており、打ち上げ成功が裏付けられている。
搭載されていた衛星は、技術実証衛星ASNARO-1のほか、「ほどよし1号機」、「金シャチ1号」、TSUBAME、そして「つくし」の合計5機である。
ASNARO-1(「あすなろ」と発音する)は一般財団法人の宇宙システム開発利用推進機構が運用する衛星で、日本電気(NEC)によって製造された。ASNAROはAdvanced Satellite with New system Architecture for Observationの略で、直訳すると「新しいシステム構成を持つ地球観測のための先進的な人工衛星」となる。その名の通り、ASNAROでは新しい開発や製造、運用の手法や仕組みが導入されており、それにより「低コスト」かつ「短納期」に衛星を開発する技術の取得が目指されている。
それを実現するため、NECが新たに開発した小型標準バスのNEXTAR 300Lが採用されている。NEXTAR 300Lはイプシロン・ロケットで昨年9月14日に打ち上げられた「ひさき」(SPRINT-A)にも採用されており、またジオスペース探査衛星(ERG、SPRINT-B)や、ヴェトナム向けに輸出される地球観測衛星JV-LOTUSatにも採用される予定だ。
ASNAROは光学センサー搭載型とレーダー搭載型の2種類が用意されており、今回打ち上げられたASNARO-1は光学センサーを搭載している。光学センサーの分解能はパンクロマチックで0.5m、マルチスペクトルで2.0m、観測幅は10kmとされる。打ち上げ時の質量は450kg。
なお、レーダーを搭載したASNARO-2は、2015年に打ち上げが計画されている。
「ほどよし1号機」は東京大学と次世代宇宙システム技術研究組合(NESTRA)が開発した衛星で、分解能6.7mのカメラを搭載し、撮影された画像は農業や林業、水産業、地図作成、地理情報システム(GIS)、災害監視などの用途で活用されるとのことだ。質量は60kg。
「金シャチ1号」は名古屋大学が開発した衛星で、可視光カメラや赤外線カメラを搭載し、災害や火災、火山などの災害、宇宙ごみの観測などを行うとされる。質量は約50kg。
TSUBAMEは東京工業大学が開発した衛星で、超小型コントロール・モーメント・ジャイロ(CMG)による高速姿勢変更技術の実証や、超小型光学カメラによる高分解能撮像の実証、X線偏光観測装置を用いたガンマ線バーストの観測などのミッションが計画されている。質量は約50kg。
「つくし」は九州大学が開発した衛星で、地球画像の取得と地上への伝送や、地磁気の精密測定、微小デブリの観測、大気水蒸気の精密観測といったミッションを実施する。質量は約50kg。
ドニエプルはNATOコードネームSS-18サタンとして知られる、旧ソ連の大陸間弾道ミサイル(ICBM)R-36M UTThを衛星打ち上げ機に転用したロケットで、ロシアとウクライナ、カザフスタンによって共同設立されたISCコスモトラス社が運用している。ドニエプル・ロケットとしては1999年に初めて打ち上げられ、今回で21機目の打ち上げとなった。2006年に1度失敗を経験したのみで、比較的安定した打ち上げを続けている。
ドニエプルの今後の打ち上げについてはまだ具体的に決まってはいないようだが、余ったICBMを使うという点で在庫が限られていること、また改修・運用コストの増加や、毒性のある推進剤を使っているといった問題から、運用の継続には疑問の声が上がっている。さらにドニエプルはウクライナ製のロケットであり、ロシアとウクライナの関係が悪化していることからも、その将来は不透明な状態となっている。
■ЗАПУСК КА «АСНАРО»
http://www.kosmotras.ru/news/154/
Written by 鳥嶋 真也
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