長野、岐阜県にまたがる御嶽山(おんたけさん)の噴火は、火山災害の恐怖をまざまざと見せつけたが、火山学者ら関係者の間で、いまもう1つの噴火リスクが注目されている。北朝鮮の火山・白頭山(ペクトゥサン)で、実際に噴火すれば北の被害はおろか、朝鮮半島、さらには日本にも灰が降るなど多大な影響が及ぶ恐れがある。実際に日本政府も事態を注視しており、状況は意外なほどに深刻だ。
「10世紀の噴火で(日本でも)約5センチの火山灰の堆積があったとされている。同規模の噴火が発生した場合には、降灰による大きな影響が発生すると考えている」
先月行われた参院予算委員会。安倍晋三首相は、白頭山の噴火の危険性についてこう話した。岸田文雄外相も「政府としても関連情報の収集に努めてきた」とし、日本政府が強い危機感を抱いていることが分かる。
白頭山は、北朝鮮両江道と中国吉林省の国境付近に位置し、標高は2744メートル。頂上付近に周囲約2キロメートルのカルデラ湖があり、観光名所として知られるほか、北では信仰の対象になっている。
中国では「長白山」の名で呼ばれ、10大名山の1つに数えられる。
両国を代表するこの名峰がいま、危機的状況にあるというのだ。
先の委員会で、噴火の懸念を問題として取り上げた浜田和幸参院議員(無所属)は、「白頭山はここ数年、噴火の兆候を示しており、世界中の火山学者がその状況を注視している。米国や英国の研究者が現地調査に入っており、中国や韓国も防災対策に乗り出しているほど事態は逼迫(ひっぱく)している」と指摘する。