国家安全保障を脅かすスパイ・テロ犯罪の捜査の効率性を高めるため、検察が捜査手続き上の特例を導入する案を推進している。家宅捜索や口座追跡の要件を緩和する方向で、刑事訴訟法を改正したいという。
裁判所は、スパイ事件の捜査であっても、一般の刑事事件と同じく厳格な法的手続きを守るよう要求している。しかし検察は、「民主社会のための弁護士会」(民弁)所属の一部弁護士が、弁論権を持ち出して捜査・裁判を妨害することもためらわないとみている。有罪が確定しているスパイに裁判で虚偽の証言をするよう強要し、2011年夏に摘発された「旺載山スパイ事件」では「被疑者が供述を拒否しているので参考人も供述を拒否してほしい」と求めたという。「一心会スパイ事件」では、被疑者5人に37人もの共同弁護士がついた。これらの弁護士は1カ月間に国家情報院で59回、検察で28回、計87回ものリレー接見を行い、捜査を遅延させた。北朝鮮が送った電子メールの場合、北朝鮮にいる送信者を韓国の法廷に立たせることができないため、証拠採用できないケースもあるという。
一般の刑事事件では、被疑者の人権保護のため、弁論権の保証はもちろん、証拠の要件も徹底して問うべきなのは当然だ。しかし先進国でも、スパイ・テロ犯については捜査手続きを別にできるようにしている。米国は、テロ・スパイ事件の容疑者が電話番号を変更し続けた場合、個別の電話番号ごとに令状の発付を受けることなく、令状1枚で全ての電話を傍受できるようにしている。捜査機関がテロ容疑者の自宅・オフィスをひそかに捜索できるようにもしている。英独では、テロ・内乱・スパイ事件の被疑者には弁護士の接見を制限している。先進諸国がこうした特例手続きを定めているのは、安全保障に関する捜査では被疑者の人権も一部制限せざるを得ないと考えているからだ。
検察・警察がスパイ・テロ犯の捜査を容易に行えるようにしたら、捜査権を乱用し、被疑者の権利を侵害する可能性も高い。スパイ・テロ犯罪に対しては捜査手続きを別にできるよう認めた上で、裁判所が非公開で管理したり、捜査機関の内部に厳格なコントロール機関を置いたりする形で逸脱をけん制しなければならない。