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アクセプト・エラー 作者:猫のマーチ@猫者に名前変えようか悩んでる人

第二章

第十六話 『培養槽 - プライベート・ラグノス』

 三菱重工屋上。
 そこに連なる扉から突然飛び出してきた金属のくだは、俺の反物質(アンチマテリアル)化している右足を掴み内部へと引きずり込んだ。
 扉の外には手を伸ばし俺の名前を叫び散らす真那の姿が見えるが、それもすぐに見えなくなった。
 数十段もある無機質な階段よりも下部から管は伸びているようで、俺は全身を壁や段差に打ち付けながら引っ張りこまれていく。

【時雨様、この管は既存のガードのものではありません】

 立体幻影機ビジュアライザーがノイズ混じりな声をかけてくるが、それに応じている余裕はない。
 俺は全身に軋むような痛みを感じながらも、頭部を打ち付けぬように両腕で頭を抱え込むのに必死だった。

「っ──ッ!!」

 四階層ほども階段を引きずり下ろされたと思った時、不意に俺の足に巻き付いていた管が外れた。
 勢いを殺せぬまま俺は、金属の硬い床を火花を散らしながら跳ね転がっていく。
 全身を打ち付ける度に形容し難い鈍痛が走り抜け、背中から壁に突っ込んだ時俺は意識を失いかけていた。

 意識が朦朧としていて、ただ、額から頬を伝って熱いものが流れているのは感じられる。
 視界は赤く染まり、明滅していた。

【時雨様、生きていますか?】
「あ、ああ……多分生きてる」

 直接脳を鷲使われているような激しい頭痛に苛まされながら、俺は右腕で痛む体を引っ張り起こす。
 そうして何度か瞬きをすると、目の焦点を定めた。
 しばらくは歪んでいたが、やがて視界が明瞭になりゆく。

 チカチカと明滅する蛍光灯。
 広い天井全体に定感覚で並んでいるそれらは青白く光り、俺が今いる場所全体を照らし出している。
 全体的に無機質な、鈍色に怪しく光を反射する壁や床。
 大体五百畳程もあり、見たところ窓は一つもない。

 俺は素早く周囲に視線を走らせるが、ここまで俺を引きずり込んだあの金属の管はどこにも見えない。
 間違いなくあれはエラーであろうが、だがあんな管が付いているエラーを俺は見たことがなかった。

【時雨様、現時点でここ付近にはエラー因子が検出されていません。先のモノがなにかは私のデータベースを用いても照会不可ですが、少なくとも今襲われる危険はないと思います】

 ネイのその言葉を聞いて、俺はそっと息を吐き出す。
 かすかに訪れた安堵感に崩れ落ちそうになるのをぐっと堪え、周囲を今一度見渡した。

 至る所に見たことのない機材がいくつも置いてあった。
 俺が壁だと思っていた背中を打ち付けたのも機材の一つで、赤錆がパラパラと舞い落ちている。
 おそらくは戦闘機F-2のパーツを製造なりするシステムなのだろうが、電気が通っていないのか作動している様子はない。
 全体に貼り巡ったベルトコンベアやクレーンも同様で、長い間使われていなかったか錆び付いてしまっている。

「なんか……変だな」

 半年以上対外エリアの中にあったのだから整備されていないのは当然なわけだが、この場所は異様に整然としていた。
 他の建物は総じて廃墟と化しているのに対し、ここは放置されていても廃れないような、そんな設備になっていた。
 外のいかにもエラー対策のために仕掛けられたメタン地雷システムといい、ここの工場は何かがおかしい。

「時雨!」

 密室に、不意に誰かの声が反響した。
 はっとして振り返ると、さきほど俺が引き摺り下ろされてきた階段から真那たちが姿を見せ始める。

 走って駆け下りてきたのか少し息の上がっている真那は、俺の姿を見つけるなりその場に崩れ落ちる。
 そんな彼女を気遣うように肩に手を置くシエナの隣には、気を失ったままのティアの手を掴んでいる凛音が立っていた。
 その様子だと先の俺と同じように引き摺ってここまで階段を降りてきたようだが、ティアのことだ、大丈夫であろう。

 俺は彼女たちの元へと駆け寄ると、ティアの体を抱き起こし背中に担ぐ。
 華奢な体にしては結構な重量が背中にかかる。

「……何だ、めっちゃ重いぞコイツ」
「烏川時雨……アンタりげに失礼ね……」

 ジト目を向けてくる唯奈のことは無視して、俺は重さに崩れ落ちそうになるのに必死にこらえながらホールの隅にまで連れて行く。
 銃砲ペインキラーなどの重さもあるのだろうが、それにしても彼女の肉体自体に重量があるような気がする。

【人体エラー化実験】

 少女の体を壁に寄りかからせた時、ネイが不意にそんなことを呟いた。

「なんだ、それ……どっかで聞いたことあるな」
【エラーの侵攻を受けた英国政府が、秘密裏に研究していた実験の名称です。研究の内容はその名の示す通り、人体をエラー化する実験。その被検体として実験を施されたのが、この少女、西洋の鬼神(コールドブラッド)・ティア】

 ネイが何故そんなことを知っているのかは解らない。
 アクセス権限自体は持ち合わせていない彼女が、その研究について熟知している理由は解らなかったが、されど今はそれよりも気になることがあった。

「まて、エラー化だと?」
【申し上げておきますが、凛音様が被検体となった『人体エラー抗体生成実験』とは全くの別です。人為的に人体を限りなくエラーに近しくするのが、この実験の目的です】
「そんなの、どうやって……」
【エラーの遺骸から抽出した因子をカルシウム成分と結合させ脊髄中枢に流し込む。脊髄にて生成される血液には常に因子が紛れ込む形になり、さらに、急激な金属因子注入による性質変化を引き起こし、全身の骨組織を金属に変貌させる……それが、この実験によってティア様の体に起こったことです】

 淡々と述べるネイの言葉に、俺は背中が寒くなる感覚を覚えていた。
 ゾクリとした、嫌な悪寒。
 エラー因子を流し込むことによる強制的な肉体の強化。
 それはもはや、人間では無くなるということではないか。

 俺は無垢なる表情で目を閉じている少女を見つめる。
 見た目の印象はまだ幼く、実年齢もきっと俺より下だろう。
 黒い戦闘服が覆う体も華奢で、到底西洋の鬼神(コールドブラッド)だなんて呼ばれるようには見えない。
 されど、彼女は英国政府の都合によって、兵器化されてしまっていた。

 形容しきれないほどの怒りが煮えたぎる。
 どこに向けられるわけでもないその憤怒を、俺は下唇を噛み締めて押さえ込む。
 今はそれに憤慨している時間はないのだから。

「シグレ……シグレはやっぱり、優しいのだな」

 不意に、袖を引っ張られた。
 小さな手が袖を掴んでいて、細い腕を辿っていくと【獣化】の解けた凛音の哀愁に満ちた笑顔がそこにはあった。
 それを見て、再びいいしれない激しい小動画胸の中にこみ上げてくるのを感じる。
 この幼い少女もまた、ティアによく似た境遇であるのだ。

「優しくなんか、ねえよ」
「優しいぞ? シグレはティアやリオンのために、そうして怒ってくれているではないか。リオンはそれが、すごく嬉しいのだぞ?」

 彼女はそう言って、俺の腕を抱きしめる。
 あどけないその姿にやはり言葉にできない感情を抱きながらも、俺は小さな頭をポンポンと撫でた。
 柔らかい大きな耳が小刻みに揺れる。

 ティアの介抱は真那に任せ、俺たちは状況確認をはじめる。

【ここは戦闘機の各パーツを組み合わせる場所であるようですね。ベルトコンベアとクレーンを経由して巨大なパーツを運搬し、製造しているようです】
「組み合わせるってことは……完成したF-2はここにあるってことか?」

 奥に進んでいくものの、目的の完成帯であるF-2はひとつも見当たらない。
 ホールの脇にいくつも存在している格納庫の中を確認してはみるものの、やはり一機として存在していなかった。

「おそらく、エラーの侵攻時にここの職員がF-2を用いて逃走したのでしょう。製造量は把握していませんが、侵攻以前の日本の所有機数は確か百数十機程度だったと思います。ここに残っていたものもほんの数機だったのでしょう」
「……てことは、そもそもここにはF-2はねえってことかよ」

 壁際に併設されていたホログラムPCに立体幻影機ビジュアライザーを接続し、全格納庫の中を確認していたシエナが、深刻な表情を浮かべて推測する。
 F-2がそもそも存在していないということは、この計画自体が全くの無駄であったということ。

 俺はやるせない気持ちで壁を力任せに殴る。
 この計画において既に沢山の犠牲者が出てしまったと言うのに、成果は何もないというのか?
 こんなの、ただの犬死にではないか。

「……ちょっと待って」

 唯奈がホログラムPCを確認しながら眉をひそめていた。
 彼女は幾度かPCを指先ではじき何かを操作すると、その内表情か少しだけ弛緩する。

「このホールに、製造途中のF-2が数機存在してる」
「どういう、ことだ?」
「そのままの意味よ。製造途中なの。つまり、パーツはすぐに出来上がっていて、後は組み立てるだけで直ぐに作動できる機体」

 それを聞いて、俺は思わず彼女の傍にまで駆け寄った。
 肩越しに頭を覗かせた俺のことを鬱陶しそうに一瞥した唯奈だが、今はそれを叱責している時ではないと判断したのか視線を液晶に戻す。

 そこには、確かにF-2の製造状況を示す簡易図が表示されていた。
 機体後部のドラッグシュートと主翼が接合されていないだけで、それを繋ぐだけで完成する機体が七機存在している。

「製造を再開させるためには、機材の状態確認と……後は機材を作動させるために電力を供給する必要があるわ」
「電力って……蛍光灯もPCも点灯してるし、電気は回っているんじゃないのか?」
「これは停止してはいけない機材を常時運転させるための、予備電源システムよ。屋上にソーラーパネルがあったでしょ? そこで太陽光発電した微弱の電力を使ってるの。でも製造機材を全て運転させるためには、通常の供給が途絶えている以上は、パネルが発電した電力をフル稼働させる必要があるわ」

 唯奈のその言葉を聞いてか、ネイがホログラミング投影される。
 彼女に促されるままに立体幻影機ビジュアライザーをPCに接続すると、彼女の足元に立体マップが展開された。
 ただし、ここまで来るときに使っていたものとは違って、どうやらこの建物の内部構造を図式化した物であるようだ。
 実寸の数万分の一にまで縮小されたその3Dホログラミング模型の内部の一点が、赤く点滅する。

【ここが電力制御室となります。ここにある配線用遮断器、ブレーカーを上げることで主電源にパネルからの発電電力をつなげることが可能になります】
「あと、手動で組立機材を設置する必要があるわ、作業を分担した方が良さそうね。烏川時雨に峨朗凛音、それからシエナは電力制御室に向かって。残りは私と機材の設置をお願い」

 指揮官さながらの指示を出していく唯奈に各々が頷く。
 俺は凛音とシエナに目線で合図を送ると、先程の階段とは反対側にあったエレベーターにまで歩み寄る。
 ボタンを押してはみるが反応はない。
 予備電源ではなく主電源で動作しているようだ。

「どうしましょうか。ネイ様のそのマップを見る限りでは、制御室は地下にあるようですが……先の階段は地下には続いていないようですし」
「ネイ、このエレベーター以外には下に降りる手口はないのか?」

 口に指を押し当て考え込むシエナ。
 確かにホログラムマップを見る限りだと、あの階段は地上一階であるこの階層にまでしか続いていない。

【元々は設営上地下に降りられる非常通路があったようですが、その場所は既に陥落しています。おそらくは製造部品を移動中に機材が崩落したのかと。瓦礫で塞がれていますね】
「となると、このエレベーターを行くしかないか……」

 致し方なく、俺はエレベーターホールに立って重厚な扉の隙間に右手を差し込む。
 力任せに横に引くと、呆気なくエレベーターの扉は開いた。
 エレベーターのかご室自体はこの階層にはなかったようで、十数メートルほど地下まで進んだあたりにその上部が見える。
 そこから伸びている太いワイヤーロープを伝っていけば、目的地である電力制御室にまで行けそうだ。

 腰に命綱代わりの金具とワイヤーを接続する。
 それらを他の二人にもつけさせ、シエナ、俺、凛音の順で降下することになった。
 摩擦で手を火傷しかねないためそれぞれ革の手袋を着用し、順番にワイヤーロープに捕まっていく。

 少しずつ高度を下げていくが、なかなか足がつく地点まで到達しない。
 どうやらかなり深くまでこのエレベーターは続いていた様で、俺は体を休めるべく目を閉じてゆっくりと深呼吸をする。

「ぬっ……あっ……!」

 だがそれと同時、突然頭に何かが降ってきた。
 首が折れるのではないかという衝撃が頭部に走り、のしかかる重量に振り落とされぬよう、反射的にワイヤーロープを力任せに握り締める。
 そうして目を見開くと、視界は黒一色に染まっていた。

「……?」

 柔らかい感触と人肌が顔面に伝わる。
 微かに漂う芳香に鼻腔をくすぐられながら何度か瞬きをしてみるものの、やはり視界は黒に染め上げられていた。
 俺は片手をワイヤーロープから離して頭の上に乗っているものをどけようと伸ばす。

「し、シグレ……あまりモゾモゾするな……そう動かれると……なんだか、むずがゆいのだ」
「……へ?」

 くぐもった凛音の声が聞こえ、思わず伸ばした手を止めた。
 彼女の声は普段の活発で朗らかな印象とは違って、どこかあでやかで官能的ですらあった。
 つややかな嬌声が彼女の口から漏れたことに驚き、同時に一つの仮説に行き着く。
 止めていた手を伸ばし顔面に乗っかっているものを持ち上げると、案の定と言ったところか凛音の小さな臀部でんぶであった。

「あまり触るな……恥ずかしいぞ」
「……す、すまん」

 微かに戸惑った表情を浮かべ、いそいそとワイヤーロープを登っていく十三歳児の少女を前に、俺は動揺を隠せない。

「……ロリコン、ですね」

 下から何か聞こえてくるのに対し、既視感デジャビュを覚えていた。


 ◇


 ワイヤーロープの末端にまでたどり着き、俺たちはエレベーターのかご室天井に降り立った。
 天井救出口のを引っ張り開けかご室内部に降り立つと 内側から先と同様扉をこじ開ける。
 それと同時に地下の空気が紛れ込み、カビ臭さ、また埃臭さが充満した。

「電力制御室はこの通路をまっすぐに抜けていった場所にありますね」

 次いでエレベーターホールに躍り出たシエナは、俺の立体幻影機ビジュアライザー上に展開されているマップを確認しながら呟く。
 どうやらここの地下は、目前に伸びる無機質な通路の脇にいくつかの部屋が羅列しているようだ。
 目的地である制御室はその中でも一番通路の向こう側、袋小路になっている地点から入室できる。

「俺を引きずり込んだあの管の本体がここにいるかもしれない、凛音、シエナ、いつでも走れるようにしていてくれ」

 俺は振り返ることはせず、ゆっくりと鈍色に光を反射する通路を歩んだ。
 先程の圧縮熱発(エアブレイク)が原因で靴はどこかにぶっ飛んでしまっていて、ズボンの裾からは反物質(アンチマテリアル)が露出している。
 金属質の踵が床と接触する度に、カンカンと背筋の寒くなる乾いた音が通路に反響した。

【時雨様、微弱にですが、制御室へ続く階段周辺にエラー因子が検出されています。先程のエラーと思しき存在が潜んでいるとすれば、そこでしょう】
「そこを通らないでいくことは可能か?」
【左四番目の部屋のダクトを経由し、迂回していけばその場所を通らなくても通過することが可能です】

 ネイのその言葉を聞き、目くばせをして進路を変更した。
 壁伝いにネイの示した部屋の前にまで来ると、鍵のかかっていない扉を開いて身を滑り込ませる。
 電気が止まっているため当然空調管理はなされておらず、湿っぽい空気がまとわりつく。

 俺たちは壁際にあったダクトの扉を開閉し、エレベーター通路を降りた時と同じ順番でその中を進んでいった。
 大の大人ひとりが屈んで通るのがやっとという狭いダクトの中には、いくつものパイプのようなものが貼り巡っていた。

「……メタン?」

 俺はパイプが接続されている金属板に、Methanという表記がなされていることに気がつく。
 なぜこんな場所にメタンガスが供給されているのかはわからないが、おそらくは戦闘機製造の過程で必要なのだろう。
 俺はそう判断し特に気にもとめずに、ダクトから外に出る。

「何だ、この部屋……?」

 足を降ろした部屋は、先の部屋とは違って絶妙な空調管理がなされていた。
 天井の四方に大きな空気孔があり、そこの中で回転している換気扇が空気を排出している。
 巨大な除湿機のようなものがいくつも据え置かれ、その内部でウィンウィンと機械音が鳴動していた。
 中には灯っていないものもあるが、蛍光灯は未だにチカチカと明滅している。

「ここには、予備電源が通っているようですね」
「電力が途絶えると困る機材とかでもあるのか?」

 訝しげな声を出すシエナに応じながら、周囲を見渡した。
 五十畳程の室内には、あらゆる機材が据え置かれている。
 錆び付いた壁や床には目的不鮮明な液体が薄く浸っていて、俺たちが足を動かす度に微かにそれが跳ねる。
 天井から突き出たパイプが部屋の隅にある巨大なガスタンクに繋がり、そのタンクには大きなバルブのようなものが接続されていた。
 メタンはあのタンクから供給されているのだろう。

 そのタンクの脇の壁には、十六インチほどの液晶パネルと、複雑な構造をした機材が嵌め込まれていた。
 その中央部にはレバーのようなものが組み込まれ、ひと目でそれが電力制御用のブレーカーであることに気が付く。

「このブレーカーを上げればいいのか?」
「……いや待て、そっちの液晶でなにか操作する必要があるかもしれないな」

 てこてこと壁際に近寄っていく凛音のフードを引っ掴む。
 好奇心旺盛なこの幼女が、状況判断をせぬままにブレーカーを上げそうな気がしたからである。

【いえ、時雨様、そのパネルはブレーカーとは関係がないようです。こちら側の壁の向こう側に何らかのスペースがあり、その場所の操作をするためのデバイスだと思われます】

 ネイが指差す側に視線を向けると、その方向の壁はどうやらコンクリートや金属製ではないようだ。
 歩み寄って指を触れさせると、ひんやりとした感触が伝わる。
 今は何かの原理で向こう側が可視出来ていないが、これは分厚いガラスの壁になっているようである。

 ガラス壁の脇の金属板には、private RAUGNHOSという横文字が刻み込まれている。
 このラグノスという表記は、そう言えば先程屋上にあったブラックホークの外装にも記されていた。

「この中には何があるんだ?」
【それは私には解りかねます。一度電力を供給し、このガラスを可視状態に移行させないことには】
「……とりあえず時雨様、早くF-2の製造を開始するためにも、このブレーカーを上げましょう」

 急かすシエナに促されるように、俺はレバーに手をかけた。
 体重を乗せて引っ張り下ろすと、ガコンという鈍い音と共に機械が動作し始めるような音が響き始める。
 地響くような音が鳴っているのは、おそらくはこの工場全体の製造機器が運転を再開したからだろう。
 半年ぶりに動き始めた機械たちは、鈍った感覚を取り戻すかのように一斉に活性化し始める。

 それに合わせ、先程のガラス壁の向こう側が青白く光る。
 強烈なライトアップがなされ、数秒後にはスペース全体を照らし出していた。

「……!」

 そこにあったものを見て、思わず息を詰まらせる。
 そのスペースは、こちらの部屋と同じくらいの間取りで、だがこちらに比べて整然としている。
 ほとんど機材という機材も無く、だからこそ、俺たちの視線は壁際に据え置かれているその異様なモノに釘付けになった。

 床から天井にまで伸びている、巨大なガラスのケース。
 円筒状に伸びているその槽は目算でも五メートルほどの幅があり、その内側には緑白く発光する液体が溜まっていた。
 下部から絶えず発生する無数の小さな気泡は、槽の上部に接続されているチューブへと上がっていく。

「なんだ、あれ……」

 そんな培養槽ばいようそうの内側には、なにか奇妙な、得体の知れない物体が浮遊していた。
 軽自動車程もあるのではないかという、巨大な立方体。
 培養液の中でゆっくりと回転している漆黒色のフォルムには複雑怪奇な紅いラインが走り、明滅しながら光を発している。

 その明滅は生命の鼓動のようで────まるでそれが、生きているかのような不気味さだった。

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霊感をその身に宿した少年・『飛鳥碧翔』は、一ヶ月ほど前から活発な幽霊・『真那』に取り憑かれていた。米倉町内で勃発する怪異事件。人が殺害され、町が崩壊への一途を辿//

  • ファンタジー
  • 連載(全49部)
  • 27 user
  • 最終掲載日:2014/11/07 12:11
ぼっち転生記

人間不信の男が、異世界に転生し精霊使いとして自由かつ気楽に生きる物語。 魔術が盛んな国の地方領主の息子と生まれた男は、天賦の才で精霊の姿が見えた為、精霊使いに//

  • ファンタジー
  • 連載(全92部)
  • 29 user
  • 最終掲載日:2014/11/08 13:30
神達に拾われた男

日本に生まれた1人の男、他人より辛い人生を送ってきた男は己の持てる全ての技術を駆使して39年の人生を生き抜き、そして終えた。その後、男は男の魂を拾った3柱の神に//

  • ファンタジー
  • 連載(全139部)
  • 34 user
  • 最終掲載日:2014/11/09 01:00
嫌われ剣士の異世界転生記

誰にも認められなかった主人公は、誰かに認められるために剣道で最強を目指す。 しかし最強には届かず、結局誰にも認められる事は無かった。 そんな彼が事故死し、転生し//

  • ファンタジー
  • 連載(全53部)
  • 29 user
  • 最終掲載日:2014/10/26 00:18
異世界迷宮探索者 ~成り上がりダンジョンシーカー~

 株式会社KADOKAWA 富士見書房様より書籍化します。  以下、あらすじ。   いじめられっ子だった少年は、クラスメイト達と共に異世界召喚に巻き込まれ//

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  • 連載(全40部)
  • 32 user
  • 最終掲載日:2014/10/31 00:01
デスマーチからはじまる異世界狂想曲

 アラサープログラマー鈴木一郎は、普段着のままレベル1で、突然異世界にいる自分に気付く。3回だけ使える使い捨て大魔法「流星雨」によって棚ボタで高いレベルと財宝を//

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  • 連載(全361部)
  • 27 user
  • 最終掲載日:2014/11/09 18:00
ゼノスフィード・オンライン

ヒューマンが優遇され、亜人が迫害される世界《ゼノスフィード》。かつて亜人の少女の為に世界と戦った少年がいた。多勢を相手に一歩も引かず、全て返り討ちにした事から、//

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  • 連載(全33部)
  • 29 user
  • 最終掲載日:2014/11/09 10:46
灰色の勇者は人外道を歩み続ける

灰色の勇者として召喚された日本人、灰羽秋。 だが、彼は召喚された12人の勇者たちのなかで唯一1人だけ、スキルの選択に時間をかけすぎてしまい別の大陸へ誤転移してし//

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  • 連載(全26部)
  • 30 user
  • 最終掲載日:2014/10/22 00:34
ありふれた職業で世界最強

クラスごと異世界に召喚され、他のクラスメイトがチートなスペックと“天職”を有する中、一人平凡を地で行く主人公南雲ハジメ。彼の“天職”は“錬成師”、言い換えれば唯//

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  • 連載(全124部)
  • 39 user
  • 最終掲載日:2014/11/08 18:00
黒の魔王

黒乃真央は悪い目つきを気にする男子高校生。彼女はいないがそれなりに友人にも恵まれ平和な高校生活を謳歌していた。しかしある日突然、何の前触れも無く黒乃は所属する文//

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  • 連載(全467部)
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  • 最終掲載日:2014/11/07 17:00
神眼の勇者 ― Ragnaløg《ラグナログ》 ― 

不登校かつ引きこもりがちのマコトが異世界に召喚される。 だが、召喚した女神アステナからは、英雄・勇者の素質がないから不要だと判断される。 そして、地球に還しても//

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  • 連載(全51部)
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  • 最終掲載日:2014/11/07 12:00
蘇りの魔王

勇者に討たれ、その命を失ったはずの魔王ルルスリア=ノルド。彼にはやり残したこと、解決できなかった問題がいくつもあったが、悪は滅びると言うお題目に従い、消滅したは//

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  • 連載(全191部)
  • 31 user
  • 最終掲載日:2014/11/06 18:00
転生したらスライムだった件

突然路上で通り魔に刺されて死んでしまった、37歳のナイスガイ。意識が戻って自分の身体を確かめたら、スライムになっていた! え?…え?何でスライムなんだよ!!!な//

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  • 連載(全269部)
  • 32 user
  • 最終掲載日:2014/11/03 00:09
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