幻の戦車:発見へ最後の望み磁気探査 浜松・猪鼻湖

毎日新聞 2014年11月08日 10時15分

 戦線に投入されないまま静岡県の浜名湖北部の猪鼻湖(いのはなこ)に沈められたと伝わる旧日本陸軍の戦車を探す浜松市北区三ケ日町の地域活性化グループ「ステキみっかび発信プロジェクト」(通称・スマッペ)が、湖底の磁気探査に必要な資金360万円を29日までインターネットで募っている。調査は2012年に始まったが戦車は未発見。磁気探査は「幻の戦車」発見への最後の切り札だ。

 戦車は「四式中戦車チト」。同プロジェクトの中村健二事務局長(54)らによると、太平洋戦争の終戦間際、陸軍が本土決戦に向けて試作中だったが、2両しか生産されず実戦で砲火を交えることなく終戦を迎えた。

 その後2両のうち1両が機密保持のため浜名湖の支湖、猪鼻湖に沈められたとされ、旧三ケ日町では口コミで伝えられてきた。当時の技術兵で実際に水没作業に携わったという男性が地元に住んでいたが、すでに他界していて「生き証人」はいないという。

 湖底に眠る戦車探しは「三ケ日を全国に発信したい」「地元の歴史を次世代に残したい」という同プロジェクトが12年末にスタートさせ、ボランティアの協力を得ながら行われてきた。鉄パイプで湖底を突く探査やダイバーによる潜水調査、測量会社による音響調査などを行ったが成果がないまま今年初めから中断している。

 しかし「戦車を見つけたい」という夢にかける中村さんらの思いは強く、ハイテク技術を駆使した専門家による磁気探査に最後の望みを託すことになった。費用は360万円。工面できなければ、これまでの努力が水泡に帰すことになる。

 中村さんらは「戦車は湖底面より下の堆積(たいせき)泥に埋もれているとしか考えられない。チャンスは今しかない」と話す。資金が集まれば、年明け早々にも調査を再開したいという。募金はネットで寄付を募る「クラウドファンディング」で行っている。募金額はやっと200万円を超えたが残りは3週間。中村さんは「ハードルはまだまだ高い」と話す。問い合わせはスマッペ事務局(053・525・3522)。【沢田均】

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