視力2000!アルマが見た惑星誕生の現場
アルマ望遠鏡の試験観測で、史上最高の解像度で見たおうし座HL星の原始惑星系円盤の姿が映し出された。惑星系が作られつつあるようすが手にとるようにわかる画像は、惑星形成研究の大きな変革を予感させる。
【2014年11月7日 アルマ望遠鏡】
およそ10年の建設期間を経て2013年から本格稼働が始まったアルマ(ALMA)は、チリ・アタカマ高原に展開したアンテナを組み合わせて高解像度の観測を行う電波望遠鏡だ。そのアルマがこれまでで最大となる15km間隔にまでアンテナを展開し、「視力2000」に相当する高解像度で試験観測を行った。
観測対象となったのは450光年彼方にある若い恒星おうし座HL星で、周囲の塵とガスの円盤(原始惑星系円盤)が一見CG画像と見紛うほどはっきりととらえられている。
アルマが観測したおうし座HL星の原始惑星系円盤。太陽系(右)の3倍程度の大きさがある(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO))
レコード盤の溝のように見えるすき間の部分は、円盤の物質を掃き集めながら大きな惑星が成長しつつある証拠と考えられる。生まれて100万年に満たない星の周りで既に大きな惑星が形成されつつあるというのは、これまでの理論では想定されていなかったことだ。
現在、実際に観測研究で利用されるアンテナの展開範囲は最大で1.5kmで、今後じょじょに機能を確認しながら広げていく。今年9月から12月までの試験観測によるプレビュー画像とはいえ「まさに惑星が作られている現場」の画像を初めて取得できるようになったことで、惑星形成の研究の流れに大きな変革が起こると期待される。
「学生時代に太陽系形成の『京都モデル』(林忠四郎氏が1980年ごろ提唱した惑星形成モデル)を勉強したとき、私が生きているあいだに惑星系が形成されていくようすが実際に見えるようになることはないだろうと思っていました。次はいよいよ宇宙における生命の兆候の発見に向かいます。私が生きている間に実現できるかもしれないと思っています」(惑星形成研究者の林正彦・国立天文台長)。