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 NTT東日本・西日本による光ファイバー通信回線サービスの卸売り「光コラボレーションモデル」がいよいよ動きだす。総務省の有識者会議は実質的に卸提供を容認する方向性を打ち出し、NTT東西も提供の対象となるサービスや提供条件を公表した。システム面での準備が整うのは12月以降になるが、すでにNTT東西は100社超と秘密保持契約(NDA)を結び、多くの事業者と具体的な検討に入っている。光コラボレーションモデルは通信市場にどんなインパクトをもたらすのか。(斎藤正人)

 光コラボレーションモデルではNTT東西の主力サービス「フレッツ光」や「ひかり電話」などを提供する。卸提供を受ける事業者にとっては設備投資をせずに通信サービスを自社ブランドで提供可能になる。自社のサービスと合わせたサービスのパッケージ化や、料金の一括請求といった利点もある。

 10月中旬の時点で光コラボレーションモデルについて問い合わせを寄せた事業者は300社を超えた。このうちNDAを結んで詳細な条件を提示したのが3分の1超。「我々が初めて気づくような新しい知恵を持った事業者が多い」(中村浩NTT東日本ビジネス開発本部第四部門長)。当初予想された通信系の事業者だけでなく、全く旗違いの事業者やベンチャーなど、多彩なプレーヤーが興味を示しているという。

 卸売価格は公表しないが「ボリュームディスカウントは一切しない」(同)方針のため、小さな事業者もチャンスを見いだしやすくなっている。また、既存の「フレッツ光」の利用者が新しいサービスに乗り換えやすい仕組みも導入しているため、結果的に通信料金の引き下げにもつながる。消費者が恩恵を受ける場面も多そうだ。

 卸売りによりNTT東西の収益モデルも変わる。卸値はこれまでの販売コストなどを差し引いて決めるため利益は維持できる見通しだが、売上高に関しては一時的に減りそうだ。

 ただし「(光回線の)単品売りは難しくなっている。市場のニーズに沿った付加価値を多くの事業者に考えてもらうことで結果的に全体の契約数は伸びていく」(同)。世界最高水準とも言われる光インフラの利活用は通信行政にとっても積年の課題だけに、光コラボレーションモデルの成功には期待感も大きい。

 とはいえ、今のところ光コラボレーションモデルでの事業モデルを描きやすいのは通信系の事業者だ。「FMC(固定通信と移動通信の融合)サービスが大きなところを占めていることも事実」(同)。例えばインターネット接続事業者(ISP)やケーブルテレビ事業者、携帯電話各社がいわゆる「セット割」を一斉に打ち出すことも予想される。

 体力勝負に陥れば携帯電話市場の“協調的寡占”が固定通信の市場に持ち込まれる事態にもつながりかねない。

 「光コラボレーションモデルは一緒にメニューを生み出していく作業。魅力的なサービスをどれだけ作れるかだ」(同)。長年日本の通信インフラを担ってきた知見を生かし、真のコラボレーションを生み出せるかどうか。NTT東西の本気度が問われる。