特別企画
“世界No.1のハイパーバイザーによるIaaS”はクラウドを変えるか?
VMware、国内データセンターによるIaaS「vCloud Air」を11/10から提供開始
(2014/11/7 14:42)
「最初のvForumを開催したときの参加者は700名ほどだった。回を重ねるたびにここから見えるお客さまの数が増えていき、仮想化の広がりを実感してきた。そして10回目を迎えた今日、1万人以上の参加登録をいただき本当に深い感慨を覚える」――。
11月5日、ザ・プリンスパークタワー東京で開催されたヴイエムウェアの年次イベント「vForum 2014」。初日のゼネラルセッションで開催のあいさつを行った、ヴイエムウェア 代表取締役社長 三木泰雄氏は、満員の聴衆を前にこう述べた。
VMwareと日本法人のヴイエムウェアが国内で歩んできた道は、そのまま国内のエンタープライズ企業における仮想化の普及と重なる。節目となった今回のフォーラムのスローガンは「NO LIMITS - 制約を解き放ち、無限の可能性を」と掲げられている。これは「ソフトウェアのパワーでもってハードウェアの縛りから抜け出し、ITだけなくワークスタイルをもより自由にする新しいテクノロジの到来を実感してほしい」(三木氏)という同社の思いが込められている。
VMwareといえば仮想化のイメージが強いが、同社は現在、仮想化技術をもとにした「Software Defined Datacenter(SDDC)」「ハイブリッドクラウド」「エンドユーザーコンピューティング(EUC)」の3つを事業の柱にしている。
そして今回、vForum 2014のために来日したパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)CEOが自ら発表に臨んだのがハイブリッドクラウドにおける新サービス「VMware vCloud Air(以下、vCloud Air)」の国内提供開始だ。
本稿ではこのvCloud Airを中心に、vForum 2014でのゲルシンガーCEOによるゼネラルセッションおよびその後に行われた報道関係者向けのプレスラウンドテーブルでの取材から、VMwareがハイブリッドクラウドにおいてどのような戦略を描いているのかを紹介したい。
vCloud Airは「オンプレミスとオフプレミスを自由に行き来する」
vCloud Airは、2013年にVMwareが発表した同社のIaaSオファリング「VMware vCloud Hybrid Service」の名称が変更されたもので、すでに米国および英国でサービスがスタートしている。
vSphereをベースに構築されたユーザー企業のオンプレミス環境またはプライベートクラウド環境と、VMwareが同社のデータセンターから提供するIaaSをシームレスに接続するサービスで、ユーザーは仮想マシンの自由な移行や、ハイブリッドクラウド間でのすみやかなアプリケーション連携を実現できる。
vCloud Airの日本でのサービス開始については、7月にゲルシンガーCEOが来日した際に年内のローンチが発表されていたが、その約束通り、11月10日に国内における正式提供を開始する。なお、日本においてはソフトバンクグループが国内各地に有するデータセンターを通じての提供となる。
正式提供開始の前に、すでに複数のユーザー企業がvCloud Airのベータプログラム提供によるトライアルを行ってきたが、ゲルシンガーCEOは「いずれの企業からも非常に高い評価を得ており、日本のユーザーに適したハイブリッドクラウドサービスだと実感している。今回、ソフトバンクグループと組んで、より多くの日本企業に本物のハイブリッドクラウドを届けられることをうれしく思う」と語り、ベータプログラム提供で得た手応えに自信を見せている。
vCloud Airの最大の特徴は「インサイドアウト、そしてアウトサイドインの移行や連携を実現できる」(ゲルシンガーCEO)というシームレスでストレスのない既存環境との接続だ。ユーザーは既存の仮想マシンを変更することも特殊なAPIを利用することもなく、自由に移動できる。既存環境からIaaSに移した仮想マシンを、再び既存環境に戻すことも可能だ。もちろん、管理ツールもこれまで使っていたものをそのまま利用できる。
ゲルシンガーCEOから紹介されて登壇したソフトバンクテレコム 代表取締役副社長兼COO 宮内謙氏は「コンシューマの世界ではあたりまえのクラウドがなぜ企業では普及しにくいのか。それは企業にはオンプレミスの資産がありすぎるから。オンプレミスとクラウドの間を自由に行き交うサービスが求められていたにもかかわらず、これまでは両者の間に互換性がなくて実現しなかった。vCloud Airはそうしたギャップを埋めるサービス」と強調するが、つまりVMwareは世界中のエンタープライズ企業で使われているvSphereというハイパーバイザを仲介にしてそのギャップを埋めたと言える。
vCloud Airで提供されるのは以下の3つのサービスとなる。
・仮想プライベートクラウドサービス――論理的に独立したマルチテナントサービス。月額11万385円から
・専有型クラウドサービス――物理的に独立したシングルテナントサービス。月額98万9319円から
・災害対策サービス――オンプレミスのvSphere環境をマルチテナントサービスにレプリケーションするサービス。月額9万1800円から
いずれのサービスも、コンピュート(仮想CPUと仮想メモリ)、ストレージ、パブリックIPアドレス、プロダクションサポート、冗長化/高可用性、ファイアウォール、ロードバランサーが含まれている。
vCloud Airの販売パートナーにはソフトバンクテレコムのほか、CTC、TIS、大塚商会、富士ソフト、SCSKなどがすでに決定している。宮内氏は「2015年3月までには国内で300社をユーザーとして獲得できると見ている。主力となるのは閉域のVPNサービス。特に開発環境やテスト環境でのニーズは高いはず。パフォーマンスが本当にすぐれているので、われわれの顧客にも積極的にvCloud Airの利用を勧めていきたい」と語っている。
VMware製品導入企業の声
ゲルシンガーCEOのセッション後、国内ユーザー企業3社によるVMware導入事例が発表された。以下、その概要を紹介する。
明治安田生命保険
情報システム部長 水野剛氏
4万人弱の従業員が利用する基幹系システムをプライベートクラウド化。2013年に仮想化共通基盤を構築したが、複数の仮想化環境が個別に立ち上がる“仮想化サイロ”の状態に陥り、「仮想化で本来やりたかったことでない」と気づく。社内のナレッジだけでは変革できないと判断し、VMwareのコンサルに相談、1年弱でスコープ設定から共通化ポリシー策定までこぎつけた。
プライベートクラウド基盤には「VMware vCloud Suite」を採用、投資効果も確実に上がっている。今後は「VMware NSX」を使ったネットワーク仮想化や、ハイブリッドクラウドの展開も検討している。社外の知見を取り入れる重要性をあらためて認識した。
エイチ・ツー・オーリテイリング
システム企画室 基盤システム企画担当部長 米田嘉之氏
百貨店業界は再編の動きが激しくM&Aも多い。またスマートフォンやタブレットのビジネス活用も求められている。トレンドにスピーディに対応していくには、IT集約による合理化と最適化が求められている。そのためのステップとして「VMware Horizon」を導入し、ITリソースを集約、4000ユーザー分のシンクライアント化を図る。従来比約20%のコスト削減と端末からの情報漏えいをゼロにすることができた。モバイルデバイスがビジネスで欠かせなくなるのは明らかなので、VMwareにはAndroidをはじめ、すべての端末の仮想化に対応してほしい。
新明和工業
航空機事業部 IT管理部 情報管理チーム 浅田高伸氏
コンプライアンス上、社内の生産管理システムを委託業者に使わせることができないため、ビジネススピードが阻害されていた。海外を含む複数の委託業者と一気通貫でオペレーションしていくにはゼロトラスト前提のセキュリティで臨む必要がある。そのためには仮想デスクトップに加え、ネットワークの仮想化を実現する「VMware NSX」で二重武装。セキュリティを確保したオペレーション環境を構築できたことで調達スピードを16%アップさせることに成功した。NSXはGUIで容易に設定できるので、わずか1日で環境を構築できた。
***
「vCloud Airの第一のターゲットは既存のエンタープライズユーザー」――。ゲルシンガーCEOはゼネラルセッション後のラウンドテーブルでこう発言している。まずはVMwareソリューションをオンプレミス/プライベートクラウドで導入しているユーザーにリーチし、クラウドネイティブなアプローチはそのあとになるという。
「クラウドネイティブを軽視しているわけではない。例えばわれわれが投資しているPaaSのCloudFoundryで構築されたアプリケーションをvCloud Airを通じてユーザーに配信するというモデルも考えている。vCloud AirによるDevOpsも近い将来に発表できるだろう。だがまずは、オンプレミスとオフプレミス(クラウド)のセキュアでシームレスな接続が先だ」(ゲルシンガーCEO)。
VMwareのクラウドはAWSと比較されることが少なくない。だが、ゲルシンガーCEOは「AWSはクラウドのパイオニアとして尊敬しているが、AWSがクラウドのすべてではない。特にエンタープライズは膨大なアセットをオンプレミスで抱えている。彼らがすべてを一気にパブリッククラウドに移行することは現実的ではない」と強調する。
米国などに遅れての正式提供となったvCloud Airだが、レガシーに苦しむ企業が多い日本市場はvCloud Airにとって非常に重要であり、だからこそ国内データセンターやパートナー選定など、日本のユーザーが満足するサービスレベル、AWSにも対抗しうる体制を整えてからローンチしたともいえるだろう。
ラウンドテーブル中、ゲルシンガーCEOに「Dockerのようなコンテナ技術が普及すると、クラウドにハイパーバイザーは不要とする意見もあるがどう思うか?」と質問をぶつけてみたところ、「クラウドにバーチャライゼーションレイヤが不要というのはありえない。だがDockerは非常におもしろい存在で、これからもますます必要とされるだろう。もちろんVMwareもDockerをサポートしている。だが最近聞く“ベアメタル”にはまったく関心がないし、流行(はや)るとも思わない」という回答が返ってきた。
「vSphereは世界で最も普及している、世界No.1のハイパーバイザー。クラウドはハイパーバイザーありきのテクノロジであり、世界No.1のハイパーバイザーをもっている優位性は大きい」――。
その“世界No.1のハイパーバイザー”によるIaaSは日本のエンタープライズITをどこまで変えることができるのかが注目される。
2014年11月7日
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