教育再生を掲げる安倍内閣のもとで、教育条件を後退させる案が出てきた。

 小学校1年生の「35人学級」を「40人学級」に戻すという。財務省が有識者からなる財政制度等審議会の分科会で示した。

 今は子どもが36人だと2学級になるが、40人学級にすれば1学級ですむ。こうして教員を4千人減らすことで、国の負担を86億円減らせると試算した。

 小1の35人学級は民主党政権が3年前に始めた。「脱ゆとり」の学習指導要領や、いじめなどに対応するためだった。

 小2以上でも検討したが、財政難で小1のみ法改正した。その小1を見直すという。

 財務省は全体的に子どもが減っているのだから、教員も減らせるはずだと主張している。

 さらに、文部科学省がめざす幼児教育の無償化をあげ、その財源としても、少人数学級の見直しが一案になるという。

 財政難の折、諸制度を吟味して予算を絞るのは大切だ。だが幼児教育の財源として、同じ文科省関連の施策の見直しを持ち出すのは省庁間の駆け引きの発想であり、安易すぎないか。

 提案の根拠も説得力に欠けており、まず予算の削減ありきだと言わざるを得ない。

 財務省が提示したデータは、いじめや暴力行為で、小1の件数が小学校全体に占める割合が増えたとの数値だ。導入前の5年間と導入後の2年間の平均を比べ、明らかな効果が認められないとしている。

 しかし、いじめの数値は発生ではなく認知件数で、教職員の意識によって左右される。特定学年の教育のあり方の評価手段には、ふさわしくない。そもそも制度の効果をわずか3年で結論づけるのは早計に過ぎる。

 日本の教員の多忙さは、経済協力開発機構(OECD)の国際調査で明らかになったばかりだ。1週間の勤務時間が参加国・地域で最長だった。そもそも小学校の1学級当たりの児童数は、日本が28人で、OECD平均の21人よりかなり多い。

 少人数学級を求める声は根強い。提案に反対する保護者らの署名活動が始まっている。根拠の乏しい提案を重ねると、国民の理解が得られず、財政再建がかえって遠のきかねない。

 学校には、貧困や格差など社会の課題が集まってくる。特別支援の対象となる子どもも増えている。教員が減ることで、子どもと向き合う時間を確保できなくなるようでは困る。

 教育は未来への投資だ。文科省は現場の実態を踏まえ、説得力のある反論をしてほしい。