ありのままでと娘の決断−87歳認知症の母、徘徊の自由で戻った笑顔
Bloomberg 11月4日(火)7時56分配信
「母が1日中家の中で叫び続けていると、私の精神がむしばまれ煮詰まってしまったが、外に出すことで本人も私もハッピーになった」と章子さん。「メリットとデメリット両方考えたとき、外に出す方がいいと思った。外で事故に巻き込まれるかもしれない心配はあったが、状況が少しでも改善されるのであれば、そのリスクは取ろうと思った」。
章子さんはメゾネットのマンション2階でギャラリーを経営していたが、数カ月閉めてアサヨさんが行くところにはどこにでもついて行った。「よく運動するからダイエットにもなる。いつも歩いていると、近所や店の人たちが助けてくれるようになった」と章子さんは言う。
母娘が暮らすビルの管理人の浅井重雄さん(75)は、エレベーターに乗り降りするアサヨさんをモニターで見つけると、管理人室に呼んで世間話をする。会話の後は落ち着いて笑顔で部屋に戻っていく。浅井さんは他の入居者にもアサヨさんの病状を説明。アサヨさんのことを尋ねる小学生にも事情を話してあいさつを促した。ビルの住人らはみんな理解し手を貸すようになったという。
他人事ではない
「普通は家の中に閉じ込めて外に見せないものを、アッコちゃんは全部外に出して見せた。それをみんな見ているから、大変そうやなと思ってできることは手伝う。認知症は他人事じゃない。僕は外に出して好きにやらしたらいいと思う」と浅井さんは言った。
アサヨさんが住むビルの目と鼻の先でコーヒー専門店「リヴォリ」を32年間営む堀敬治さん(67)は、午前6時から客に提供する朝食の準備をしながらアサヨさんを見守る。アサヨさんは肩からかばんを下げて、九州へ帰ると言って一生懸命に歩いている。コーヒーを飲んでいかないかと声を掛け、朝食を取るとアサヨさんは落ち着き会話が弾む。そのうち、母親がいないと気づいた章子さんが店に探しに来る。
堀さんは、2人が道の真ん中で口論をしているのを見て同情し助けるようになった。「いつも一緒に歩いて追っかけて、娘さんはすごいし大変だと思う。逆に娘さんが一緒にいないと心配になる。こちらも仕事や生活があるからそのリズムを崩すことはできないけど、その中では助けてあげようと思う。大丈夫かなと思って気にかけて見ている」と話す。
最終更新:11月4日(火)11時55分
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